第三部:縞瑪瑙と錬金術師
□暗がりに潜む者達
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近頃表立った動きを見せなかったギルド“闇夜”だが、彼らはスリーピーウッド最深部の神殿から撤退し、現在は薄暗い洞穴に身を潜めていた。
「只今戻りました」
そう言って静かに洞穴へやってきた女性が1人。
「あ、お帰りネズミ!」
その声と姿に気付いた少女が奥から嬉しそうな声をあげる。
洞穴の中央には焚き火が燃えており、その火を挟んで入り口側に先程の少女が、反対側にはゆったりとしたローブを纏った女性が座っていた。
「なんだ、ウサギも戻ってたのかい?」
「うん、さっき戻ったんだよ。
日差しに報告してたとこ」
と言うとウサギと呼ばれた少女はそこに座れと言うかの様に自分の隣の床をぺちぺちと叩く。
「ではまず座って下さいな」
奥にいる日差しと呼ばれた女性の言葉に頷いて、ネズミはウサギの隣に腰を下ろした。
「そう言えば日差し、マスターは?」
「ブラッド様はエヴァンを探しに出払ったままですが…少々遅いですね」
「何かいい情報でも見つけて追い回してるんじゃない?」
「その可能性はありますね。
さてネズミ、報告はありますか?」
「自分はここのところ外周りばっかりでね、あんまり報告することは無いかな。
強いて言えば雪山の亡霊がエルナスの町中にまで入って来たって言うのを聞いたくらい。
その後亡霊さんは消えちゃったみたいだけどね」
「そうですか…。
まぁ一応記録だけしておきましょうか」
と言って日差しは側に置いてあった紙にサラサラと書き留めていく。
日差しの横で面白そうに彼女の紙を見つめていたウサギが不意に自分のいた場所に戻って言う。
「そうだ、思い出したんだけどさ…twilightの方で面白そうなことがあったんだよ」
「自分がいない間に何かあった?」
その隣でネズミが興味深そうに聞いてくると、ウサギは嬉しそうに口を開く。
「あんまり大きなことじゃないんだけどね、丁度ウチが向こうのアジトから出てくる時にさ。
何か2人程ギルドから追放されたみたいなんだ」
「へぇ…来る者去る者拒まずってギルドなのに追放ねぇ。
何かやらかしたの?」
「そこまでは分からないなぁ…。
あ、でもその2人“光”と一緒にいた奴だったよ」
「うーん、もしかしたら何か意図でもあるのかね?」
メモしていた紙を纏めて、日差しは焚き火越しに2人を見て言った。
「その辺も含めて、貴方達にはまた偵察をお願い出来ますか?」
「了解だよー!」
「じゃあ久し振りに戻るとしますか」
「じゃあ日差し、後よろしくね!」
ウサギは相変わらずの笑顔で手を振り、ネズミの手を取って洞穴を出ていった。