第二部:地底の隠れ里
□僅かな休息
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リュカ「悲しいお話…
でもその話とあたしが“光”だってことと…
いったい何の関係があるの?」
ダーク「さっきも言った通り、“闇”と呼ばれた力は…ヴェイルの魂なんだ。
でも普通、人が死んだ時に魂が残ることはない。
けれどその辺にいる幽霊はどうかな?
彼らはこの世への未練が強いために、死んだ後も幽霊として残っている。
それと同じように、ヴェイルの持つこの世への未練と彼の能力が集まったものが、“闇”と呼ばれる力だ。」
ハイル「暴走してたのに未練なんかあるのか?」
スカイ「暴走していたとはいえ、彼の自我が完全に消え去っていたワケではありません。
彼にはゲルダという恋人に“言えなかったこと”があったようですし。
死してなお、この世に残るには十分ですよね?」
ハイル「そうなのか…
ところで何でさっきの昔話やら今の“言えなかったこと”とか、他人の知りようの無いことが伝わっているんだ?」
ダーク「それはね、過去にも僕のような“闇”の力を持つ者が“時空の扉”を開け、その場面を見て本に書き留めたからだよ。」
リュカ「過去に行けるならどうにかしてヴェイルさんを止めることは出来ないの?」
ダーク「気持ちは分かるけどその過去があるから今があるんだ。
だから過去を変えるということは今の現実を変えるのと同じ。
時空の扉を使って出来ることはたくさんあるけれど、僕らの力が足りないからかそれとも神の定めか…
過去を変えることと未来に行くことは出来ないんだ。」
「ま、所詮俺ら人間に変えられるのは今だけってことだな。」
ハイル「うぉ、いつの間に」
ダークとスカイの話を聞いている間には姿を消していたリュウがいつの間にか部屋の壁に寄りかかって話を聞いていた。
サラもその脇で興味なさそうに立っている。
スカイ「あら?
もう戻って来たの?」
サラ「いや、そんなに早うなかったで?」
ダーク「だいぶ長く話してたからね。
この辺でお昼にでもしようか。」
サラ「っしゃあ!」
お昼という言葉を聞いてサラは拳を振り上げた。
リュカ「ねぇサラとリュウさんってどこに行ってたの?」
リュウ「ちょいと昼飯の調達にな」
そう言ってリュウは傍らに置いてある自分の槍に括り付けられた大きな袋を取り出す。
リュウ「さっき取って来たのはピグにツノキノコ、あとは畑で取れた野菜が一通りだな。」
ハイル「意外とサバイバルなんだな…」
サラ「でもちゃんとピグとかは養殖もしとるんやで?
今日のキノコは野生のやけど」
リュカ「…ていうかこのキノコ美味しいの…?
い、色が…」
サラ「ま、そこは食ってみてのお楽しみやな!
安心せぇ、ウチらも食うんやし、毒なんかはあらへんから。」
とりあえずはそう言って浮かべたサラの屈託のない笑顔を信じるしかないリュカとハイルだった。