第二部:地底の隠れ里
□いざ、三次転職!
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「失礼しまーす…」
エルナスの一番高いところにある三次転職官達のいる建物。
その扉が開かれ、リュカが顔を出した。
建物の中には様々な落ち着いた色のローブを纏った5人の人間がいて、一番入り口に近いところにいる銃を持つ男が開きかけた扉の外にいるリュカ達に声をかけた。
「お前達、新たな力を求めて来たのか?」
「は、はい!」
「外は寒いだろう。
とりあえず中に入るといい。」
と、招かれて入っていく5人。
一番最後にリュウが建物の中に入り、扉を閉めると奥にいた大きな剣を背負った男が声を上げた。
「おや久しぶりじゃないか…
リュウ。
5年振りか?」
「「!?」」
異世界の住人に向けられた思わぬ言葉に驚き、後ろのリュウを見る4人。
その視線に気付いていないかの様に、リュウは自分に声をかけた転職官を見て、
「あぁ。」
そう返事をした。
それは明らかに肯定と取れるものだった。
「ど、どういうことだよ!
異世界の人間はこっちに来たことなかったんじゃないのか?」
噛み付くように問い質す炬燵。
その問いに対してリュウは答えず、それを見た剣を背負った男…戦士の転職官、タイラスが口を開く。
「お前…
まだ言っていなかったのか?」
「……」
「…まだ何も言っていないようだな。」
無言のリュウを見て事情を悟ったタイラスはそのまま言葉を続けた。
「こいつはその異世界の生まれじゃあない。
もともとはここ、エルナスの人間だ。
それにそいつは、俺の弟子でもある。」
「…え…」
思いもよらない事実に驚く4人。
不満そうな表情をし、手にしていた槍を持ちなおしてリュウは呟く。
「まぁ弟子といえば弟子なんだが…
見れば分かるだろうが俺はスピアマン系統にあたる。
だからといって戦士の転職官であるこいつの弟子になるっていうのは…いささか納得いかないんだがな。」
そう言ってタイラスを睨むが、睨まれた方はにやりとして言葉を返す。
「ほう、他の奴より目をかけてやったというのにお前はそれを無かったことにするっていうのか?」
「…まったく…これだから帰りたくなかったってのに…」
タイラスの言葉に反論が出来ないのか、リュウは盛大にため息をつくとそっぽを向いた。
言葉だけ聞くと喧嘩しているようだが、2人のやりとりにはどこか微笑ましいものがあった。
そんな2人を見ていた4人にリュウはそっぽを向いたまま問い掛ける。
「お前らは俺の話を聞くためにここに来たわけじゃあないだろう?
目的を放っておいていいのか?」
そう言われ、真顔になったタイラスが4人を見て告げる。
「見たところお前達は盗賊と魔法使いだな。
上にいるアレクとロベイラの力を借りるといい。」
それだけ言うとローブのフードを目深に被り、何も言わなくなった。
タイラスが口を閉ざしたことで今まで響いていた喋り声が消え、暖炉で薪が燃える音だけが響く。
すると突然ピリピリとした緊張感が広がり、今更ながら4人はこれから乗り越えるべき試練を悟ったのだった。