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□保健室にて。
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サッカーの練習中、突然豪炎寺が足首をかかえて座り込んだ。
「豪炎寺!」
円堂が豪炎寺のもとへ駆け寄ると、豪炎寺は心配するなとばかりに軽く笑みを浮かべてみせた。
練習していたほかのメンバーも豪炎寺を囲むように集まってきた。
メンバーたちは次々に大丈夫か?次の試合があるんだからと声を掛けた。
「大丈夫か?休んだほうがいいんじゃないか?」
円堂は豪炎寺に保健室に行くように言った。メンバーたちもそれぞれ保健室に行くよう促した。
豪炎寺は少し考える素振りをして、その後保健室に行くことにした。
「悪いな、みんな練習に戻ってくれ」
「俺、付き添おうか?」
円堂が手を差しのべると、首を横に振った。
「いや、俺は…」
豪炎寺は顔を上げ、1つの場所を見つめた。メンバーたちもその視線の先を追ってそこを見た。
「吹雪、付き添ってもらうから」
「えっ」
吹雪は驚いたように小さな声を漏らした。
「いいよな」
「うん、別に…じゃあ僕、豪炎寺を保健室に連れてくから…」
豪炎寺の腕を肩にかけ、グラウンドに背を向け、2人は保健室に向かった。
メンバーは口々に豪炎寺を心配する言葉を発していたが、やがて練習に戻ったようだ。











「悪いな吹雪、付き添ってもらって」
豪炎寺くんが付き添えって言ったから…。しかも半ば強引に。
「ううん、別にいいよ」
校舎に向かいながら、保健室に目をやった。先生がいないように見えた。
「やっと2人きりだな」
唐突である。
「うん、そうだね」
ニコリと笑って答えた。
2人は少し前から恋人同士だ。豪炎寺が吹雪に想いを伝え、吹雪も同じ想いだと答えた。
しかしそれからは練習があったり、周りの目が気になってなかなか2人きりになれなかったのだ。
そして今、ようやく2人きりになれたというわけだ。けが人と付添人という関係だが…。











保健室の戸を開け、失礼しますと声を掛けても中から返事はなかった。保健室の中に入り、戸を閉め、辺りを見回すと先生はいなかった。
「あれー?先生いないみたいだね」
職員室だろうか。
「豪炎寺くん、先生呼んでくるから待ってて。椅子がないみたいだからベッドに座っててよ」
豪炎寺をベッドに座らせようとしたその時、ぐいっと腕を捕らえられ、そのままベッドに押し倒された。
「な、何するんだよ!」
豪炎寺を睨み付けると、上にのし掛かられた。
「ちょっと、足ケガしてるんでしょ、先生呼んでくるから」
「足ケガしてないから」
「ほら足ケガして…ない!?えっ??さっき足ケガして」「あぁ、それ嘘だから」
さらりと涼しげな顔で答えた。あれは演技だったのか。
「じゃあなんで保健室まで来たの?」
「保健室に行くフリをしてどこか見つからない場所に行こうと思ったが…外から保健室に先生がいないのが分かったからな、保健室でするのもいいかなーと」
する、という怪しい単語に吹雪は一瞬ビクリと体を強張らせた。
「な、何されるの僕…」
「今教えてやるよ…」
豪炎寺の目には獲物を追い詰めた肉食動物のような怪しい光が宿っていて、吹雪を怯えさせるのだった。
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