頂き物と先代の足跡

□とある夏祭り
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蒸し暑さが残る日暮間近の祭りで賑わう街中を異色な三人が歩いていた。
美形二人と彼らに挟まれる形で歩く浴衣姿の美少女にすれ違う人々が振り返る。

中心にいる人物は、水色の生地に紅い金魚をあしらった浴衣に黄色の帯を結ぶ、陽に透けると金にも見える茶色の髪と青灰色の瞳の少女。

右隣にいる人物は、濃い青の甚平を纏う飛びはねた銀の髪に翡翠の瞳を持つ青年。

そして左側にいる人物は、真っ黒な甚平を着用し、うちわを片手に歩く金の髪をオールバックにした青い双眸を持つ青年だった。

「ね、ねえ、ロゼ。あの子ワンちゃん?」

そんな中、青灰色の瞳を持つ少女、天音が右隣を歩く青年、ローゼンティスのシャツの袖をつんつんと引っ張った。

服の袖は持ったまま、食い入るようにみつめ、視線をこちらに向けない彼女の見やる方向につられて翡翠が向けられる。

そこには、茶色に染まったミデイアムショートヘアに狐のお面を乗せ、紺の生地に薄ピンクの牡丹が咲き誇る浴衣に赤の帯を結ぶ天音と同年代の少女。

青の甚平を着用する灰色に近い銀髪と明るいブルーの瞳の十歳くらいの少年が一人、そして狐にも見える生き物がいた。

十歳くらいの少年がこちらを見つつ何かを言っているのに促されるようにして、少女のやや大きめの瞳」がこちらに向けられてはいたが、天音の目は少女達の足下に寄り添う生き物に向けられたまま。

全体は金色の毛並みに覆われ、耳の先だけが焦げ茶の狐に見える。
しかし、通常街中で狐にお目にかかることはほとんどゼロに近いため、天音の質問も当たり前だといえるだろう。
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