★Story★

□手
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井上と付き合うようになり
一緒に帰るようになった。
彼女は相変わらず何もないところで転ぶ。
今日もまた転んでるよ。

派手に転けたなぁ。
「ほら」
と差し出す俺の手。
転けた井上を引き上げるために。

「あ、ありがとう」
引き上げられると
彼女はすぐに手を離そうとする。
恥ずかしいからなんだろうな。
だけど俺はまだ離したくなくて
井上の手をしっかりと握りしめた。
力を入れすぎないように。
だけど

離れていかないように。



「え、っと…くろさ、き…くん?」
恥ずかしそうに
だけど
困惑しながら問いかける井上がかわいかったから
離そうとした。
だけどやっぱり離したくない。

「また転けたら困るだろ。
だから繋いだままにしてろ。」
「うん。」

「…それにさ…」


続けて話す俺の言葉に
彼女の顔が赤くなった。
きっと照れてるんだろう。
もちろん俺の顔も赤いんだろうけど。
だけど嫌な気持ちではない。

井上は恥ずかしそうにしながらも
「うん!ありがとう!!」
と満面の笑みで答えてくれた。
手を握り返してくれた。

家までの距離はあと少し。
もっと遠けばいいのに…

彼女と一緒にいる時間が長く続けばいいのに…


「あ!井上、ちょっとどっかで休憩してかねぇ?」
「うん!あ!あそこのケーキ屋さんのケーキがね…」



―それにさ…
お前と手繋いでたいんだ。
体温が俺の傍にいるって感じたいからさ。





Fin.



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