Gift
□素直と名前と不整脈。
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「神田、」
入学式があった季節から少しずつ日差しが厳しくなっていく頃。
「今帰りですか?」
今日も変わらぬ笑みでやって来る。
「モヤシ…」
「アレンです」
もうお馴染みのこの会話。
一種の挨拶と言っていいかもしれない。
「お前も諦めないな」
「はい。だってちゃんと名前で呼んで欲しいですから」
いや、というか俺に近づく事を。
俺は何故か恐れられている。
目を合わせるまでもなく逸らされるし、声を掛ければ怯えられ、笑いかければ泣きながら逃げられる。……たまに。
別にいじめられてる訳じゃない。…少し、孤独なだけだ。
だから高校に入ってもそれが続いていたからこんなに堂々と接触してきてコイツは大丈夫なんだろうかと心配になる。
俺みたいな奴と一緒に居るとモヤシも浮いてしまうんではないだろうか。
………そう思うと、自然と距離を取ろうとしてしまう。
「…神田?何で離れて……」
「………。っあ、」
足下を疎かにしてしまって近くの段差に躓いてしまった。
「ーーーーーっ!
大丈夫ですか!?」
転けると思った寸での所でモヤシに支えられた。
「へっ平気に決まってんだろ!伊達に鍛えてねぇっ……」
ついいつもの調子で悪態を吐いてしまう自分が嫌だ。