アレ神・短編

□用法用量をよくお守りください
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「ねぇねぇコムイさん!」
「駄目だよアレンくん」

僕の方を見向きもせず、コムイさんはコーヒーをすすりながら冷たく言った。

「…まだ何も言ってません」
「言わなくてもわかるよ。君がそうやって目を輝かせて室長室に駆け込んでくる時は神田くんによからぬことを働こうとしているときでしょ」

完全に考えを先に読まれてしまい、僕は少し意気消沈した。
しかしここでやめては意味がない。
何が何でも聞いてもらうのだ。

俄然張り切って僕はコムイさんに談判した。

「お願いします!」
「やーだーよー。後で神田くんに怒られるの僕なんだよ?」
「コムイさんは無関係だってことにしますから!あ、あと、僕、いいサボり場所見つけたんですよ」

サボり場所、という言葉にコムイさんの耳がぴくりと動いた。


行ける。


「…で?何がしたいの?あんまりすごいのやめてねー、僕殺されちゃう」
「そんなひどいのじゃないですよ!あの、昔師匠に聞いたんです。猫の耳と尻尾が生える薬をコムイさんが作ってた、って…ほんとですか!?」

僕が目を輝かせたのとは対照的に、コムイさんはコーヒーを吹き出し、噎せた。

「えっ、ちょっ、何でそんなこと…」

心なしか動揺しているようにも見える。

「え、だから師匠が…」
「…まったく、あの人は」

はぁ、と呟いてコムイさんは机を開けた。
意外にもすぐに出てきたので、僕は拍子抜けした。
薬は透明な液体で、小さな瓶に入っていた。

「あのね、アレンくん。神田くんの猫耳見たいだけなら数滴で十分だから。間違えても全部とか入れないでね」
「入れるとどうなるんですか?」
「…さぁ?」

コムイさんはいかにも答えたくないという風情を醸し出して目線をそらした。

まぁいい。
とにかく、これで目的は達成に近づいたのだ。

「ありがとうございます。これ、サボリ場所のメモです。じゃ!」

意気揚々と小瓶を手にして、僕は鍛錬場へと走った。



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