アレ神・短編

□CALL ME
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それに辿り着けば、この戦いは終わると信じていた。いや、確かに終わるのだ。
しかも、勝利という形で。
考えうる限り最良の結末を皆、待ち望んでいた筈だった。
終戦の代償として何を失うのか、まだ知らなかったからかもしれない。





 黒の教団が千年伯爵に勝利するのに欠かせないものは、「ハート」と呼ばれるイノセンス。
その持ち主がアレン・ウォーカーであることが判明し、教団内は一気に湧きたった。
振り返って考えれば今までの彼の経歴からしてその可能性は高かったと思う。

だがそれでも教団内の興奮はただならぬものがあって、食堂のどこもかしこもその話題でいっぱいであることに神田は仕方ないと思いつつも苛々した。

「まだ勝ったわけじゃねぇだろ…」
「もう、神田ったら。少しくらい喜べば?」

決して他の連中のようにお祭り騒ぎに参加しているわけではないリナリーも少し嬉しそうだ。

別に喜ぶのは仕方ないと神田も思うのだ。
だが、「ハート」が誰だか分かったからと言って、それをどう使うかも問題だし、必ず勝てると決まったわけではない。

騒ぐのはまだ、早すぎる。

 神田は舌打ちをしながら食堂を離れようとした。
リナリーが慌てて追いかけようとして立ち上がると、食堂の入口に見知った白い人影が現れた。


「ちょっと、いいかい?神田くん、リナリー」


その声はお祭り騒ぎの熱狂とはかけ離れた、冷めきった響きだった。


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