アレ神・短編

□ポーカーフェイス
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「狭いですね」



ぽろっと思ったことを口に出したら、君は下らないとでも言いたげにふん、と呟いた。

「文句があるなら出て行ってやるよ」
「別にそうは言ってないでしょ」

じろりと僕を睨みつける目は、どうだかな、と言っていた。
責めるようなその視線に少々いたたまれなくなって、僕は言い訳を捻りだす。

「ほら、教団のベッドって全体的に小さいし?」
「だから、不満なら出てくっつってんだろ」

元々低い君の声がさらに低くなった。
怒らせたくて言ったわけじゃないから、僕は少々慌てた。

「そんなこと言ってるんじゃないですって」
「じゃあ何だよ」
「だから、ちょっと狭いなって思っただけで」
「つまり俺が邪魔だって言いたいんだろ、帰る」

ぷっつり切れた口調で、君は荒っぽく起き上った。
首まですっぽりかぶっていたシーツがばさりと落ちた時に薄い肌色の肩が見えたせいで、僕は危うく君を帰してしまいそうになった。


「ちょっと神田、だめですよ」

すんでのところで腕をつかんだ。
君は振り返らない代わりに反論もしない。


「ちゃーんと言いましたよね?」


僕が嫌味なくらいにっこり微笑むのと反対に、君は心底嫌なことに触れられたという顔で渋々振り返った。

「…何だよ」
「自分だってポーカーフェイスが出来るって証明するために、僕とポーカーで勝負しましたよね?」
「…だから何だよ」
「始める前に約束しましたよね?」

君の奇麗な顔がどんどん歪んでいくのが少し面白くて、僕は余計に微笑んでしまう。


「僕が勝ったら、何でも一つ言うこと聞くって」



だから今日は、帰してあげない。


Fin.

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