アレ神・長編
□四季譚 ―秋―
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「…もう、一週間?」
「大体ね」
「ねぇ、大丈夫かな…色々」
「そればっかりは、僕にも分かりかねるけど」
現在コムイとリナリーの兄妹の話は、専らアレンに関する事で占拠されていた。
この一週間ずっとそうで、正確にはアレンと神田の仲とそれが周りに及ぼす影響について、と言った方が正しい。
一週間前、夏祭りが終わりに近付いても戻らないアレン達を心配し、全員で探し回った。
すぐにアレンは川辺に見つかったけれど、神田はどこにもいなかった。
神田の所在を問いかけると、アレンはたった一言呟いた。
「帰りました」
それ以上言いたくないという思いがずっしり詰まった、たった一言。
あの日以来、アレンは神田のところに行かなくなった。
何があったのかなんて聞かずとも分かる。
きっと何かまた喧嘩をしたに違いないし、神田が怒って帰ったならアレンに会おうとはしないだろう。
アレンが座る縁側が少しだけ見える部屋で二人は話していた。
「…何かアレンくん、気持ち悪い」
そう言いながらリナリーは、縁側にひっそり座っているアレンの背中を覗き見た。
「気持ち悪いって酷いよリナリー」
「だって、何か気持ち悪いもの。魂が抜けてるみたいで」
「そうだねぇ…」
「アレンくん、今までは結構な無茶もしてたのに、急に勢いが無くなるんだもの。それが何か、怖い」
リナリーがそう思うのも無理はないか、と思いながらコムイも縁側に座る後姿を見た。
あのアレンが何も訊いてこないというのも妙だ。
神田が激昂した―――アレンは激昂したとは言わなかったがあの神田であるからそう考えて間違いないだろう―――理由について、何かしら訊かれるだろうと身構えていた身としてはいささか拍子抜けの感があった。
訊く気も起きないのだろうか。
そうだとしたら、らしくない。
それこそ猪の如く目的に向かって突っ走るのが今までのアレンだった。
しかし今はすっかりしょげたように蹲っているのだから、全くらしくない。
そう思いながらコムイがアレンを見つめていると、リナリーが間に挟んだちゃぶ台をとんとん、と叩いた。
「兄さん」
「何?」
「教えてあげないの?」
「…訊いてくるまではね」
本当は、少し君に、期待していたのにな。
あの子の投げやりさを、少しでも変えてくれるんじゃないかと。