クロコム・短編

□ペルソナ慕情
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 中央庁からその知らせが下りたのは珍しくすっきりと晴れた金曜日の午後で、その時僕は科学班の自分の机でかりかりと化学式を組み立てていた。


「コムイ班長」


低く威圧的な声。

僕は自分の中にふつりと湧きあがる黒いものをぐっと抑え込み、柔らかい笑みを作ったことを確認してから顔を上げる。

こういう時、長い前髪は便利だ。

 蛇を思わせる鋭く冷たい目と視線がぶつかる。
マルコム=C=ルベリエはいつものツイードの背広を羽織り、そびえ立つように僕の横に立っていた。

「何でしょう、ルベリエ長官?」

にこやかに言いながらゆっくりと立ち上がる。


我ながら随分な役者になったものだと思う。


この男の所業を初めて知った時、二度と起き上がれないくらいに痛めつけられたらと本気で思った。

 その気持ちは今でも変わらない。
けれどそんなことをしては自分がどういう扱いを受けるか知っているから、僕は極力従順な部下を演じている。


全てはあの子を、この男や教団の非道から助け出すため。


 ルベリエは僕のにこにこした顔を少し疑わしそうに見たが、ふいと顔を逸らし後ろに立っていた部下から一枚の紙を受け取って僕に差しだした。


豪勢に黄金で縁取られた紙に記された文字と、型押しされたローズクロスを見て思わず僕は息を飲んだ。
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