【 コラボレーション 】
□【甘くて苦くて、光を探して:Part2】
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ツェッド「なるほど、そういう訳だったんですね…」
バーテンダー「はい、そういう訳だったんです…。
うぅ、本当にごめんなさい…。
でも、ツェッドさんは、私が責任を持って元の世界にお返ししますから!」
ツェッド「あっ、いえ、お気になさらず。
こうしてお茶もご馳走になってますし」
状況を把握出来てしまえば、意外にも心は落ち着くもの。
“世界を渡る術”だなんて―…と初めは思ったが、ココはどうやら“魔術師”という者が存在する世界らしい。
そして、詠唱時の彼女の声に応じたツェッドのいた世界[ばしょ]は、なんせ“あのヘルサレムズ・ロット”。
何でもアリのあの街だ。
こんな“奇跡”だって、ひょっとしたら規定内なのかもしれない…寧ろそう思えてきた。
そんな訳で、驚きはしたものの、ツェッドは「まぁ、どうにかなるだろう」という余裕を持って、目の前の手作りスコーンを堪能していた。
タマゴに聞けば、魔力が十分に回復してからまたあの術を発動させれば、きっと“お互いに”元の世界に帰れるはずだと言っていたので、別段焦ることもなかった。
ツェッド「それにしても、コチラは随分と平和なんですね。
確か、日本でしたっけ?
アジアの一国の…」
バーテンダー「そうですよー。
(聖杯戦争中だけど)ご覧の通り平和な国です。
そういえば、ツェッドさんのいた世界は、どんな所なんですか?」
ツェッド「僕がいた世界―…というより、街はですね―」
ふわりとした彼女の微笑みが優しくて、ツェッドもすっかり心を許し、自分がいた世界のことをスラスラと話していった。
異界と現世が交わる街・ヘルサレムズ・ロットのこと。
自身が所属している秘密結社・ライブラのメンバーのこと。
人ならざる者の存在のことなど…。
「しまった、もしかしたら怖がらせてしまったかもしれない」と途中で心配もしたのだが、ソレは要らぬ心配だったようで。
“異界”という言葉に、彼女は子どものように瞳をキラキラとさせた。
どう見ても人間ではない自分の話に熱心に耳を傾け、コロコロと絶えず表情を変えていくタマゴ。
そんな彼女を見て、「この人は、子どものように純粋で優しい人なんだな」と、ツェッドはぼんやりとそう思った。
バーテンダー「素敵…ヘルサレムズ・ロット…。
異界と現世が交わる街だなんて、なんて芸術的なんだろう…!」
ツェッド「でも、本当に危ない所ですよ?
今だから思いますが、タマゴさんが向こうに飛ばされなくて良かったです」
バーテンダー「…そんなに?」
「はい」というツェッドの返事を聞いて、タマゴは徐々に顔を曇らせた。
バーテンダー「………ランサー、大丈夫かなー…」
ツェッドと入れ違いで、恐らくヘルサレムズ・ロットに行ってしまったランサー・ディルムッド。
サーヴァントであるから、多少の危機は回避できると思うが、やはり心配である。
こうなってしまったのも自身の行いが原因であるから、タマゴは責任を感じて、すっかりしょげてしまった…。
そんな彼女を見て、ツェッドは優しく声を掛ける。
ツェッド「タマゴさん。
心配かもしれませんが、大丈夫ですよ。
確かにあの街は危険な所です。
でも、彼は…ランサーさんは、ライブラにいる可能性が高い。
僕がソコにいましたから。
そうすれば、僕の仲間が、きっと力になってくれますよ」
「だから、大丈夫です」。
再度その言葉を口にすれば、タマゴも「うん…」と控えめに頷(うなず)いた。
バーテンダー「そうですよね。
ツェッドさんの仲間がいれば…うん、安心です!」
ツェッド「えぇ、頼れる先輩方ですから、任せてください」
この時、一瞬、“あの兄弟子”が頭を過(よ)ぎったツェッドだったが―…。
わざわざ“不安要素”のことを話して、彼女を余計に心配させることもないだろう。
という訳で、兄弟子のことは、頭の隅に追いやってやる。
向こうの世界にいるであろうランサーという人物に、心の中で声援を送りつつ、今はただ、目の前にある彼女の笑顔が長く続くように祈るツェッドなのであった…。
◆向こうの世界の、褐色の男がクシャミをした
無事でいてね、元気でいてね。
早く会いたいよ…。
バーテンダー「ランサーとツェッドさんって、似ている所がたくさんあるんですよー」
ツェッド「へぇ、そうなんですか?」
バーテンダー「はい!
槍で戦うし、礼儀正しいし、何よりも声が一緒!」
ツェッド「声、ですか?」
バーテンダー「そう!
あっ、あと2人とも格好良いです。
イケメンさんです!」
ツェッド「かっ―…///!?
っ、ら、ランサーさんはともかく、僕はそんな事ありませんよ!」
バーテンダー「いいえー、そんな事あります。
素敵だと思いますよー。
という訳で、スケッチしますからモデルさんになってください!」
ツェッド「え、『スケッチ』?」
(NextPage:後書き)
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