【 コラボレーション 】

□【甘くて苦くて、光を探して:Part3】
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タマゴの世界にお邪魔しているツェッドの思った通り、ディルムッドはライブラにて保護されていた。


最初こそ、人間化したツェッド本人ではないと分かった途端、ライブラのメンバーは闘争心と警戒心をそれぞれ見せたものだった。

しかし、ディルムッドがこれまでの経由を説明すると、有り難いことに彼等はこの状況を納得してくれた。


まさか信じてくれるとは期待してなかったが、ココの世界の事情―…。

―と言うよりも、教えてもらったヘルサレムズ・ロットがどんな街か考えれば、この“奇跡”も「有り得なくはないか」と案外すんなり受け入れてしまうのかもしれないなと思った。



ディルムッド「しかし、恐らくオレと入れ替わってしまったそのツェッド殿が心配だな…主が事の成り行きを説明しているとは思うが…」

レオナルド「うーん、そうですね…。
      でも、きっとツェッドさんも無事ですよ。
      ディルムッドさんと同じ槍の武人で、強いですし」

ザップ「いやいや、無事に“着地”出来たとしても、その後はどうだかなー?
    この槍兵の“主”ってヤツが、どんな奴か怪しいところだしよ…。
    オレの師匠並に強くて理不尽で、魚類をボッコボコに伸してたりして」

レオナルド「え…」

ディルムッド「失礼な。
       主は誰にでもお優しいお方だ。
       そんな真似は一切しない」

レオナルド「そそそそぅッスよね!」

ザップ「えぇ〜、どうだかなー?」

レオナルド「ザップさん!」



レオナルドがディルムッドに謝った。



レオナルド「すいませんディルムッドさん…コイツ、クズなんで」

ザップ「おいテメェ今何つった?

レオナルド「『クズ』って言いましたけど?」



ディルムッドは驚いた。

この2人は、ライブラにおいて先輩と後輩の関係にあるらしいが、言葉の応対には一切遠慮が無い。

何だかんだ言いつつも、信頼し合ってるから為(な)せることなのだろう…。


自分とマスターも、このように何でも言い合えるような関係に―。



ザップ「んだとこの陰毛頭〜!」

レオナルド「あだだだだだ!
      ちょ、アンタだってSSSじゃないッスかー!」



…い、いや…やはりある程度の節度というものは、必要であるべきなのかもしれない………。

最も、彼女[マスター]がこんな風にスラングを口にするとは今後とも思えないが…。


心の中で、ディルムッドは静かにそう思ったのだった…。

そして、目の前の攻防劇を黙って見ておくのもアレなので、レオナルドを庇うようにザップに声をかけた。



ディルムッド「ザップ殿、もう止めにしないか。
       そのように乱暴にして…レオナルド殿も困っている」

レオナルド「ディルムッドさんマジイケメン!」

ザップ「うっわ、魚類と同じ声で説経かよ」



「勘弁してくれ」と、ザップは本当に嫌そうな顔をして言った。



ディルムッド「…レオナルド殿。
       ザップ殿は、いつも“ああ”なのか?」

レオナルド「そうッスねー。
      いつもこうです、クズ中のクズです」

ディルムッド「(れ、レオナルド殿も容赦ないな…)」

レオナルド「そして、そんな彼とよく喧嘩するのが、弟弟子のツェッドさんでした。
      性格正反対だし…。
      あっ、因みに彼の性格はディルムッドさんに近いですね」

ディルムッド「ふむ、そうなのか」



同じ声、同じ戦闘スタイル、他人からみたら似た性格…。

ココまで一緒だと、『ツェッド』という人物に一目会いたくなってきた。

寧ろ一戦交えたいほどである。

正確には人間でない“半魚人”らしいが、ソコは気にするほどでもないだろう(※驚きはするかもしれないが)。


きっと今頃、彼はタマゴの絵のモデルになっているに違いない。

無事に元の世界に戻れた暁(あかつき)には、彼女が描いたツェッドの人物画を見てみようとディルムッドは思った。



ザップ「あーあ、槍扱ってるヤツは良い子ちゃんしかいねぇのかよ。
    ったく…魔術師だか何だか知んねぇけどよ、お前の“マスター”っつう野郎もそうなのか?」

ディルムッド「失礼、オレは『良い子ちゃん』などではなく騎士だ」

ザップ「いやそういう事じゃねぇよ天然かよ!」

ディルムッド「それから、ザップ殿。
       我が主は女性だ、男性ではない」

ザップ「………えっ、マジ?」



ザップの目が大きく見開かれ、キョトンとした表情になった。

ディルムッドの隣りでは、レオナルドが「あちゃー」と顔を片手で覆っている。

…どうしたのだろう?



ザップ「ちょ、ソレ本当か?
    オレはてっきり、マスターっつーのは野郎かと…」

ディルムッド「確かに男性のマスターもいるが、女性もいる。
       我が主がそうだ。
       というより、“魔術師”というものに男女は関係ないな」

ザップ「へ、へぇー…いくつだ?」

ディルムッド「?、確か今年で20だと聞いていたが」

ザップ「20!
    ヨシ、良いぞ!
    見た目は?、どんなタイプだ?」

ディルムッド「…?」



ザップがあまりに自分のマスターについて聞きたがるので、さすがのディルムッドも不審を感じられずにはいられなかった。

マスターが女性だと分かった途端、ザップの態度が先程とはかなり違うものになってしまったから、無理もないだろう…。



レオナルド「あー、ディルムッドさん…。
      あまりご自分のマスターさんの事、教えないほうが良いですよ。
      この人、女性にも見境なくて、とっかえひっかえしているような人ですから」

ザップ「ちょ、レオてめぇ!」

ディルムッド「な…!」



何て人だろう。

危うくマスターの事を、ザップの要望のまま話してしまうところだった。


見目麗しい彼女は、きっと彼に気に入られてしまうに違いない…!


そう思ったディルムッドは、自身のマスターを守る為にも、一切ザップには情報を漏らさないと決めた。



ディルムッド「すまないが、ザップ殿にはもう我が主についてお伝えすることはなくなった」

ザップ「はぁぁあああ!?
    何でだよ!
    どうせ世界が違うし会うこともねぇんだから、想像くらい良いだろぉ!??
    あんな事やこんな事やよぉ!!」

ディルムッド「ひ、卑劣な…!」

レオナルド「うっわやっぱ最低だこの人!」



確かに無害かもしれないが―。

例え無害だとしても、マスターを頭に浮かべながら邪(よこしま)なことを考えられるのは、従者として我慢ならなかった。

ディルムッドにとってその行為は、彼女を辱(はずかし)めていることに他ならないのだから…。



ディルムッド「…俺が言えたことではないが、ザップ殿は女性関係にもっと誠実であるべきかと…」

ザップ「あっ、何だお前?
    お前も女侍(はべ)らせたり二股かけたりしたことあんのか?
    ははーん、真面目とみせかけてやるなお前!
    まー、あるよなー、その面だし」

ディルムッド「ご、誤解だ!」



「それに、女性は向こうから勝手にやってくるんだ!」


…―そう叫びそうになったディルムッド。

しかし、さすがにこの台詞は(魅了[チャーム]の事情を知らないと)嫌味極まりないので、彼等との関係を崩さない為にもグッと飲み込んだのであった…。





◆世界を越えてもアナタを守る



ソレが、アナタを慕う自分の役目だから。



ザップ「なーなー。
    マスターちゃんの髪の色は?
    スリーサイズは?」

ディルムッド「っ、しつこいぞザップ殿!」<スチャ>

ザップ「おっ、やるか?」<スッ>

レオナルド「も〜、ザップさん何ディルムッドさんいじってるんですか(しかもメッチャにやにやしてるし…)」




(NextPage:後書き)

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