行雲流水
□吹いたのは、
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気付けば、星が目立つほど空が暗くなっていた。
ユウは呆気にとられて目の前に立つ長身の人影を眺めた。
暗いせいではっきりとは分からないが、明らかに整った顔立ち。中性的だが丸みを帯びた肢体から女性だと分かる。着ている天人のような衣装は、古い時代を思わせた。
ユウより頭二つ分は高い彼女は卵が崩壊すると同時に現れた。まるで、闇が輪郭を持つように。
「あの…、あなたは……」
無意識に指差しながら問うと、女性は穏やかに答えた。
「出してくれてありがとう。私のことは、『妖精』と呼んで頂戴」
「『妖精』…?」
女性はそうよ、と笑う。
「いつのまにかそう呼ばれるようになっていたの。大して間違いではないから、そう名乗るようにしたわ」
人に会うことのほうが、稀なのだけど。
どこか寂しそうに目を伏せる。
ユウは正常に戻りきれない思考で漠然と理解した。
自分は今、『不思議』に遭遇している。
おそらくこれは、人生の分岐点だ。
期待と不安で心臓がどくんとなった。
『妖精』は言った。
少女が心の底から望んだ言葉を。
「お礼といってはなんだけど、三つの願いを叶えてあげるわ」