行雲流水

□出会ったのは、
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 酔いそうになったためすぐに目を閉じたが、時空の風の中には様々な光景が現れては消えていた。
 過去も未来も、おそらくはどんな世界かも関係のない風景。
 三半規管が弱いとは思わないが、これは酔う。絶対に酔う。
 明らかにこれは、人智を超えたものだ。

 胸に飛び込んできたものを、ユウは反射的にしっかりと抱き締めた。

 この場所が、この風が、とてもおそろしかった。
 ただし、感じたのは恐怖ではなく畏怖。
 本来知ってはならないことが、ユウはただひたすらにおそろしかった。

 ふと、歌が聞こえてきた。

 ――空には満月 大地に向日葵
   天を支える 世界樹に
   白い桜が 咲いたなら
   祝福の鐘が 鳴り響く

   新たな出会いと始まりに

   新たな出会いと始まりに…――

 たくさんの子供達の楽しそうな歌声。

 目を開けていればその光景を見つけることができたかもしれないが、ユウはしっかりと目を閉じていたために彼らの笑顔を見ることはない。
 しかしユウはその歌に勇気付けられた。
 この自分というものが消えそうなほどのおそろしさの中で、守られたような気がしたのだ。

 分からないなら、分からないままでいいか。
 別に、自分はこの場所で生きようとしているのではない。
 危うく忘れるところだった。

 ユウは小さく笑みを零した。
 心の中で少しの歓喜がおそろしさを押しのけて、大きく花開いた気がした。
 
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