行雲流水
□出会ったのは、
3ページ/8ページ
浮遊していた足がどこかに触れるのを感じて立とうとするも、敵わず座り込んだ。
おそろしさの消えた周囲に、ユウはおそるおそる目を開けた。
どうやら、夜の森にいるらしい。
木々の間から月明かりが漏れている。
「ここは、何地方のあたりだろ…」
周りを見渡しても森だけで、手がかりになりそうなものは何もない。
折角ポケモンの世界に来たのに、そのポケモンすら見当たらないというのは一体どういうことだ。
とりあえずユウは抱きしめたままだったものに目を落とす。
が。
「……なんか…………縮んだ…?」
先に目を引いたのは、今まで見ていたものよりも一回りは小さな手。
「えーっと…」
三つの願いのうち、使ったのは二つ。
一つ目が元の世界から記憶を消すこと。
二つ目がこの世界にトリップすること。
「………だったはず」
若返りなんか願った憶えはない。年を取るよりは、よほどいいが。
考えても仕方がないものは早々に諦め、ユウは改めて腕の中のものに目を落とした。
これは、たまごだ。
他にどう説明しようもない。この世界に在る以上、ポケモンのたまごであろうが、あいにくと何の種類かは分からない。というより分かったら異常だろう。この場合。
「でも、メスじゃないかなー」
黙っていると少し寂しいので、口に出して呟く。
真っ白のたまごはこつこつと叩いても何の反応も示さない。
「ゲームもアニメもたまごのデザイン大体決まってるし、僕の記憶はあまり信用できないし」
半月が南の空に昇っていくのを見て、ユウは息をつく。
「……とにかく、移動しよ」
一匹ぐらいポケモンを見ないことには、喜ぶものも喜べないじゃないか。