行雲流水

□出会ったのは、
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 浮遊していた足がどこかに触れるのを感じて立とうとするも、敵わず座り込んだ。
 おそろしさの消えた周囲に、ユウはおそるおそる目を開けた。
 どうやら、夜の森にいるらしい。
 木々の間から月明かりが漏れている。

「ここは、何地方のあたりだろ…」

 周りを見渡しても森だけで、手がかりになりそうなものは何もない。
 折角ポケモンの世界に来たのに、そのポケモンすら見当たらないというのは一体どういうことだ。

 とりあえずユウは抱きしめたままだったものに目を落とす。
 が。

「……なんか…………縮んだ…?」

 先に目を引いたのは、今まで見ていたものよりも一回りは小さな手。

「えーっと…」

 三つの願いのうち、使ったのは二つ。
 一つ目が元の世界から記憶を消すこと。
 二つ目がこの世界にトリップすること。

「………だったはず」

 若返りなんか願った憶えはない。年を取るよりは、よほどいいが。
 考えても仕方がないものは早々に諦め、ユウは改めて腕の中のものに目を落とした。

 これは、たまごだ。

 他にどう説明しようもない。この世界に在る以上、ポケモンのたまごであろうが、あいにくと何の種類かは分からない。というより分かったら異常だろう。この場合。

「でも、メスじゃないかなー」

 黙っていると少し寂しいので、口に出して呟く。
 真っ白のたまごはこつこつと叩いても何の反応も示さない。

「ゲームもアニメもたまごのデザイン大体決まってるし、僕の記憶はあまり信用できないし」

 半月が南の空に昇っていくのを見て、ユウは息をつく。

「……とにかく、移動しよ」

 一匹ぐらいポケモンを見ないことには、喜ぶものも喜べないじゃないか。
 
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