行雲流水
□出会ったのは、
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歩き始めて、すぐに問題が生じた。
体が縮んだせいで、服のサイズが合わない。
靴などは裸足になればいいとして、困るのは制服だ。
上だけになろうにも中途半端な長さにしかならないし、下は下でウエストが会わないせいで落ちる。スカートの下に穿いていた短パンは一応紐は締めたがそれにも限界はある。
それに何よりも。
「この格好で人前に出るのは、ちょっとなぁ」
別に恥ずかしさはないが、注目されたくはない。人は苦手だ。
とはいえこのままここでじっとしているわけにもいかないため、ユウはとりあえずどこかに向かって進んでいた。
周囲には木々ばかりで、町がどの方向にあるか見当もつかない。
これでもし森の奥に進んでいたら笑えない。心の底から笑えない。
ユウは不思議な気分だった。
夜の森に差す白い月光。
風のそよぐ音すら聞こえそうな静寂。
当たり前のように凪いだ風。
なんだか。
「…全知全能になったみたいだ」
呟いて思わず笑みを浮かべた。
この森は、優しい。
おそらくこの世界が肯定するはずのない己の存在を、全面的に肯定してくれている。
それはまるで無償の愛。
「ありがたい、なぁ」
自分はこの世界の全てに拒絶されてもおかしくなかったのだから。
「本当に、ありがたい」