行雲流水

□出会ったのは、
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 ふいに裸足の足が何かを掠めた。

「……?」

 今のは、植物の感触じゃなかった気がする。
 掠めたところあたりで足を振ってみると何かに当たった。

 木の影に隠れて、何かがいる。

 ユウの胸が期待で大きく鳴った。
 足元にたまごをおろす。
 一歩二歩と近づいて、その何かに向かってそろそろと手を伸ばした。

 唐突に、空気が変わった。

 ――ガサッ ガサガサッ

 ユウは伸ばしていた手を引っ込め、たまごを再び抱きかかえた。
 そして静寂を破った足音のほうをじっと見つめる。
 足音の主が姿を現す前に、木々の間を抜けて炎が現れた。
 驚きが体を硬直させる。
 逃げられなかったユウの前に、木の影に隠れていた何かが飛び出した。

 くすんだ赤色の体毛。先の丸まった六本の尾。そしてなにより狐に似たその体躯。

「ロコン……!」

 特性がもらい火のそのポケモンに炎は吸収された。
 ロコンはユウの前で彼女を守るように構え、――――そこに足音の主が姿を現した。

 犬に似た体躯に橙と黒の描いた模様。アニメでは、ジュンサーさんと共にいる姿をよく見た。

「ガーディ……」

 ユウが小さく呟く。

 ガーディは人間の少女とロコンを見止めて、驚いて立ち止まった。

『人間、とロコン……? なんでここに……』
『そこのガーディ!!』

 ロコンに一喝されて、ガーディは反射的におすわりの体勢になった。

『相手を確かめないで攻撃するんじゃない! もしもここにいたのが俺じゃなくて草タイプや虫タイプだったらどうする! 危険極まりないだろう!!』

 ロコンが怒鳴る。

 …………というか、ガーディは嗅覚が優れてるんじゃなかっただろうか。
 ユウが疑問に思い、そのまま伝えてみると、ガーディは困ったように後ろ足で首元を掻いた。

『においがな、しなかったんだよ。それにここは夜になると立入禁止になるし、まさかこんなところに人間の子供がいるとは思わねぇだろ』

 だから、人影が見えた瞬間攻撃した、と。
 なるほど。納得はできる。
 
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