行雲流水

□出会ったのは、
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「よし、じゃあ次。どうしてロコンは僕を守ってくれたの?」

 この質問を聞いて先に口を開いたのはロコンではなく、ガーディだった。

『お前、この子の手持ちじゃねぇの!?』
『だから怒ったんだっ。モンスターボールも持ってない子供を放っておくわけには行かないだろう』

 前半は本気で驚いているガーディに、後半はユウに向けて言った。

『……どうかしたか?』

 ロコンが不思議そうにユウを見る。
 ユウは虚を突かれた表情をしていた。

「いや…」

 緩慢に頭を振ってそれだけ返す。

 結構かなり驚いたらしい。
 どこか他人事のように思いながら、ユウは胸が温かくなるのを感じていた。

 目頭が熱くなり、視界がゆっくりと滲む。熱を持った涙が頬を伝う。

『どうしたんだ!?』
『お前がいきなり攻撃したからじゃないのか!?』

 ガーディとロコンのうろたえた声が聞こえる。

 ユウは笑った。

 ロコンの、誰でも持っているような優しさが、ポケモンの世界に来たことを、現実として実感させた。

 胸の奥から喜びと嬉しさがあふれた。

 この場所にいることがどうしようもなくしあわせで、ユウは流れる涙をそのままに、月の光を浴びて笑った。
 
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