行雲流水
□踏み出したのは、
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目を開けると、見知らぬ天井が見えた。
そしてニョロモのドアップ。
『あ、起きた! 知らせてくるっ』
そう言ってニョロモはユウの視界から消えた。
頭が上手く働かない。
ここはどこだろうか。
記憶が途中で途切れている。気が緩んで気絶するように眠ってしまったらしい。
ということはここはオーキド博士の助手用の仮眠室か。
ユウは重い体に力を入れて、何とか上体を起こした。少し目が回る。
着ている服はそのままだ。体も縮んだまま。
「……夢じゃ、ない」
呟きと共に安堵の息を零す。
カチャリと部屋の扉が開いた。
ユウが目をやると、ニョロモに先導されるように、二人の青年が入ってきた。どちらも二十歳前後あたりだろうか。
一方は、やわらかなくせのあるくすんだ赤色の長めの短髪で、つり上がり気味の目は焦げ茶色。着ている物は榛色の着物で下には朽葉色の袴を穿いていた。そして綺麗に整った顔立ちをしていた。
もう一方は、黒色の目に橙色の髪。横髪の一部はそこだけ黒くて長い。薄い黄色のTシャツらしきものの上に黒いベストを着て、ジーパンを穿いている。腰に付いた飾りは手錠を模しているようだ。こちらも系統は違うが、明らかに見目が良かった。
想定内では、ある。
ポケモンの二次創作をする上では取り上げられることは結構多い。
「もしかして、夢斗と、七希……?」
ユウはほとんど疑っていない表情で言った。
問われて驚いたのは当の本人達だ。
人間は人の姿をとったポケモンの種族までは解ったとしても、個体までは解らない。
予想はできるとしても、初めてであればすぐには解らない。何も話してすらいないのに、これほど確信した顔で、どうして言えるのだろう。
「解ったの、か?」
夢斗に問われて、ユウはきょとん、として肯定した。
「まあ、ニョロモが呼んでくるって言ったから、オーキド博士か夢斗か七希だろうとは思ったし、あとは勘? というかなんとなく?」
これは、ユウがこの世界の人間ではないからだろうか。
夢斗と七希は顔を見合わせた。