行雲流水

□踏み出したのは、
2ページ/10ページ


 目を開けると、見知らぬ天井が見えた。
 そしてニョロモのドアップ。

『あ、起きた! 知らせてくるっ』

 そう言ってニョロモはユウの視界から消えた。

 頭が上手く働かない。
 ここはどこだろうか。
 記憶が途中で途切れている。気が緩んで気絶するように眠ってしまったらしい。
 ということはここはオーキド博士の助手用の仮眠室か。

 ユウは重い体に力を入れて、何とか上体を起こした。少し目が回る。
 着ている服はそのままだ。体も縮んだまま。

「……夢じゃ、ない」

 呟きと共に安堵の息を零す。

 カチャリと部屋の扉が開いた。
 ユウが目をやると、ニョロモに先導されるように、二人の青年が入ってきた。どちらも二十歳前後あたりだろうか。

 一方は、やわらかなくせのあるくすんだ赤色の長めの短髪で、つり上がり気味の目は焦げ茶色。着ている物は榛色の着物で下には朽葉色の袴を穿いていた。そして綺麗に整った顔立ちをしていた。

 もう一方は、黒色の目に橙色の髪。横髪の一部はそこだけ黒くて長い。薄い黄色のTシャツらしきものの上に黒いベストを着て、ジーパンを穿いている。腰に付いた飾りは手錠を模しているようだ。こちらも系統は違うが、明らかに見目が良かった。

 想定内では、ある。
 ポケモンの二次創作をする上では取り上げられることは結構多い。

「もしかして、夢斗と、七希……?」

 ユウはほとんど疑っていない表情で言った。
 問われて驚いたのは当の本人達だ。

 人間は人の姿をとったポケモンの種族までは解ったとしても、個体までは解らない。
 予想はできるとしても、初めてであればすぐには解らない。何も話してすらいないのに、これほど確信した顔で、どうして言えるのだろう。

「解ったの、か?」

 夢斗に問われて、ユウはきょとん、として肯定した。

「まあ、ニョロモが呼んでくるって言ったから、オーキド博士か夢斗か七希だろうとは思ったし、あとは勘? というかなんとなく?」

 これは、ユウがこの世界の人間ではないからだろうか。
 夢斗と七希は顔を見合わせた。
  
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ