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□序章
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大海に浮かぶ小さな島に、柔らかな光が差し込む…。

リトウ地方にも、ようやく朝がやってきた。
小さな島の朝は早い。
もう暗いうちから人々は働き始めている。基本的に自然が豊富なこの地方は、まず木々の世話から朝が始まった。
水をやり、雑草を摘み、自然農薬液による殺菌。
このような細かな作業が、地方の人々の生活を支えているのだ。

すっかり空が明るくなり、今度は子供達が学校に通い始めた。それぞれ街に一つずつある予備校に通い、トップトレーナーとなるべく修行する。それがリトウの子供達の定められた道であり、リトウが中堅トレーナーの宝庫と言われる所以でもある。


このリトウ地方はわずか4つの街から成っており、他地方にあるようなジムはない。その代わりにバトル予備校「トレーナーズカレッジ」があり、年に4回大きな大会「リトウリーグ」が開催されている。実はこのリトウリーグは全国最難関とされているのだが、一見はただのトーナメントである。
その秘密はリーグの年間制覇者のみが参加資格を与えられる最終課題にあり、これは達成者が一人もいない。



その頃、リトウ地方最小の街「ガイナタウン」では、リーグに関連して一騒動が起こっていた。

ガイナタウン出身で、昨年のリーグを年間制覇した若きトレーナーが突然姿を消したのだ。

「置き手紙もナシ、手掛りもないし……。一体どうしたんだろう。」

街のお巡りさんも頭を抱えている。

そこへ、一人の少年が現れた。
銀色の髪をオールバックにして後ろに束ね、切長な瞳も銀色、大きめのズボンをカジュアルに着こなし、上半身は黒のタンクトップ、右手首には黄緑色のリストバンドを付けた、妙に大人びた少年だ。

「やはり、見付かりませんか…。」

少年は丁寧にお巡りに話しかける。お巡りは申し訳なさそうにうつ向いた。

失踪した少年の名はゴウカといい、地方で一番のトレーナーとして有名だった。

「やっぱり悔しいんだろうね。あれだけ目標にして、追い抜くことを目指していたライバルが突然失踪するんだもの。ユウト君も気の毒に…。」

近くにいた主婦が小声で話している。ユウトとは、この銀髪の少年のこと。ユウトはNo.2であり、幼馴染みでライバルのゴウカを追い抜くことをずっと夢見て修行していたのであった。

物語はそんなところから始まる……。


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