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□第一章
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翌日、ユウトはこっそり身支度すると、だれも起き出していない早朝にそっと家を抜け出した。
まずはマンダシティに住むラルドの元に向かった。
「なぁんだよこんな早朝から…。」
叩き起こされたラルドは不機嫌そうにユウトに応対する。手には目覚まし時計が握られていた。
「ラルドさん、お願いがあるんだけど。」
「ん、何?」
ユウトは眠そうに目をこするラルドの肩を掴んだ。
「レックウザ、貸してもらえませんか!?」
「………はァ?」
ラルドは変な声をあげる。
しかしユウトは真剣だ。
「全国を回るとなると、うららのスピードじゃあ時間がかかりすぎるんすよ。お願いします!」
突然のむちゃぶりに、ラルドは慌てふためいた。
「何でお前にレクを貸さないといけないんだよ!そもそもどうやって挑戦の許可をもらったんだ?」
「オトギさんが。」
ユウトの言葉に、ラルドは溜め息をついた。家の電気を付けると、近くの椅子に腰をかける。
「そう言うと思った…。」
ラルドはどこからともなくハイパーボールを取り出し、机の上に置いた。
「お前が立ち去った後にな。急いでホウエンに飛んだんだ。俺のドレイクはスピードを上げて育ててあるからな。レクには話をつけてある。ただし、使っていいのは地方から他地方へ移動する時だけだ。後は着いた先のセンターから俺に転送しろ。同地方内ならお前のうららでも大丈夫だろ。」
ユウトは嬉しそうに頷いた。そっとハイパーボールを手にとる。
「ありがとうございますラルドさん。俺、頑張ります!初の達成者になってみせますよ!」
「いい心掛けだ。行ってこい。たまには連絡しろよ。親父さんは俺も何とかしとくから。」
「ハイ!」
ラルドは時計を見ると、慌ててユウトの背中を押した。
「早く行け。みんなが起きてくる。レクはでかいから見付かったら一騒動だぞ。」
「分かってますよ。頼むレク。まずは……、カントーに!」
ボールから飛び出したレックウザは、ぐっと体を伸ばした。
『乗れボーズ。振り落とされるなよ。』
「え?喋るの?ちょ、ちょっと…」
ユウトがしがみつくのを確認するや否や、レックウザはまだ薄暗い空へと飛び出して行った。
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