学校はお勉強するところ

□回想
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入った瞬間、一斉に部室の中にいた人がこちらを見る。

「みんな、あのね!先生女の子スカウトしてきちゃった。あんぬちゃんていうんだけど、見学に来てくれたから、活動内容の説明でもしてくれないかな??」

先生が話すと

「やった〜!女の子がきた〜!かっわいい〜!なに、あんぬちゃんていうの??」

目を輝かせながら長髪の軽そうな人が近寄ってきた。

「おい閻魔!抜け駆けは許さんぞ!」

前髪をくくってピンでとめているひょろい男の人が、長髪の男の人の制服の裾を掴む。

「2人ともさっそくナンパしようとしてんじゃねーよ」

金髪で、不思議なことに小さな角が生えている男の人がしかめ面して怒る。

その隣にいる黒髪でいかにもモテそうな顔立ちの男の人が

「さっそくバカやらないでください」

と鋭い声で言うと、2人は「はい…」と返事して大人しくなった。

なんだか面白い人たちだなと思い、思わずくすりと笑ってしまう。

「笑った顔、超可愛い!」

「私の彼女にならないか!?」

「ふざけるな太子!オレがいただく予定なんだから」

「2人とも、もうふざけないで。あんぬちゃん困っちゃうでしょ」

先生が2人のやりとりを制止する。

「いいえ。面白いです」

高校に入って約1ヶ月、わたしの心は殺伐としていた。
そんな心を穏やかにしてくれる、そんな部活な気がした。

「先生、わたし、ここの部活、入りたいです」

「まだ何の説明もしてないのに??」

先生が目を見開く。

「はい」

「うわー、やったー!」

2人が声をあげて喜んでくれた。
座っている金髪の男の人も笑顔を向けてくれてて、モテそうな男の人も決して嫌そうな表情をしていなかった。

頬がこんなに緩んだのが久しぶりだった。
わたしはここに存在していいんだってすごく嬉しくなった。


みんなと自己紹介をしあった後、わたしは先生と共に部室を出た。

「入部してくれてありがとう。ってまだ入部はしてないか。明日、入部届け書いてきてくれるかな??」

「はい。ていうか、こちらこそありがとうございました」

わたしは先生に向かってお辞儀をした。



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