学校はお勉強するところ

□恋バナ
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テスト週間が終わると今度はテスト返しが始まる。


数学は70点で、古典は85点だった。


「夕子〜!」

「おめでとう、あんぬちゃん」

あまりの嬉しさに夕子に抱きついた。
夕子はわたしの背中を優しく叩いてくれた。

「良かったな。これで河合の断罪免れたし、芭蕉先生も喜んでくれるだろうな」


鬼男の言うとおりに、この点数だったら先生も笑って褒めてくれるだろうか。
今日の部活がいつもよりもさらに待ち遠しい。





昼休みになりお昼を食べ終えて、夕子と鬼男と萌山くんとぐだぐだとおしゃべり。
途中トイレに行きたくなったので1人その場から抜けた。


廊下はけっこう静かなのに、各教室から話し声や笑い声が響いている。
こういう光景がいかにも高校、という感じで好き。

トイレから出て自分の教室へ戻ろうとしたとき、芭蕉先生を発見。

後ろからそっと先生に近づいて名前を呼ぶ。


「うわ!あんぬちゃん!」

「あはは。先生、また驚いてる」

「そりゃ驚くに決まってるでしょ〜」

おかしくなりしばらく笑い合う。
笑いが止まると、少し沈黙が流れる。
この沈黙が不自然な気がして気まずい。
慌ててわたしは今日のテスト結果を報告しようと口を開いた。

「先生、わたしさっき古典のテスト返ってきたんです。結果は85点でした!」

にかっと笑ってピースを作る。
先生は目を少し開いてから、笑顔になった。

「すごい!おめでとう〜!」

先生は自分のことのように、嬉しそうに笑って、一緒にはしゃいでくれた。
最近、わたしが告白してフラれたことが夢みたいに、気まずさが一気にどこかに飛んでった。

「ああ…!」

先生の持っていたプリントが辺りに散らばった。
窓からそよ風が吹いてきたのだ。

先生は慌ててプリントを拾い集める。
わたしもしゃがんでプリントを集めていった。

「はしゃぎすぎですよ、先生」

「みっともなかったね〜」

「わたしのことなのに、そんなに喜んでくれるなんて、先生はやっぱり優しいですね」

もう自分の周りにプリントが落ちてないことを確認して、先生に集めたプリントを差し出す。

「ありがとう」

先生がそう言って受け取った。

「…優しいのは、あんぬちゃんのほうだよ」

囁くように小さく、先生が言った。

「こんな私に、いつも、笑いながら駆け寄ってくれるんだ。感謝してる、ありがとう」

「それくらいでありがとうなんて言われても困りますよ。これからも付きまといますからね」

鬼男にやってるみたく、先生に向かって舌を出した。

「だって先生が好きだから。では、また放課後!」


あっかんべ。

芭蕉先生にあからさまに失礼な態度をしたのは初めてだった。
意味もなくそれが面白くて、1人でにやにや笑ってた。


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