学校はお勉強するところ

□晴れた午後
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眠気が覚めないぼぅっとした頭でニュースを見る。
お天気お姉さんが整った顔で話している。
今日は雨らしい。
カーテンを開けて外を見ると,薄暗い空。

「傘が必要でしょう」

わたしはチョコレートクリームを塗ったトーストを食べ終えて,歯を磨いて学校に向かった。

しとしととした雨。
じわじわとした空気。
嫌な天気だった。

買ったばかりのブルーのチェックの傘が使えることだけはいいけれど。

千円しただけはある。
この傘はとってもキュートだ。
変な色の空の中,目立つ色とデザインだ。

「おはようございます。先輩の傘,可愛いですね」

後ろから自転車通学の妹子がやってくる。
新品の傘をさっそく褒めてくれる可愛い後輩。

「えらいね,妹子は。きちんとかっぱ着て」

「傘差しながら自転車漕ぐの疲れるんで」

「わたしはかっぱ着るほうが疲れる」

「まぁそうですけどね。それじゃあお先に失礼します」

妹子は立ち漕ぎでわたしの先を行った。
自転車のタイヤが水たまりの上を滑り,水しぶきをあげた。

教室に入るとまず鬼男と挨拶する。
ホームルームが終わったあとは友達の夕子とぽつりぽつりと会話する。

いつもと変わらぬ日常が始まった。
ただ今日はクラス中のテンションが低い。
雨って不思議。なぜ人の気分をのらなくさせるのだろう。

昼休み,わたしはお弁当を食べ終えて,廊下に出る。

夕子は図書委員で今週の昼休みはずっと図書室にいる。

1人ですることもないので,人があまり通らない,廊下の窓のところで黄昏ることにした。

どんよりとした雨の外を見るのはあんまり面白くなかったけれど,静かで,こういう時間は嫌いじゃない。

「あんぬちゃん」

名前を呼ばれて振り向くと芭蕉先生がいた。

「なにしてるの,こんなとこで」

芭蕉先生は穏やかに笑っている。

「景色見ていたんです」

わたしも思わず表情が和らぐ。

「雨の外を??」

「はい。なんとなく…」

「あんぬちゃん変わってるなぁ」

先生はそう言って笑った。

芭蕉先生が現れたことで一気にわたしのテンションが上がった。

「でも,雨もたまにはいいよね。しんみりする感じが先生は好きだなぁ。こういう日は,物寂しい音楽を聴きたくなるよ」


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