学校はお勉強するところ

□silver record
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陰鬱な絵が書かれた灰色のCDジャケット。
silver recordというタイトルがついていた。
4曲入りのこのCDは,シングルではなくてミニアルバムの位置づけらしい。
芭蕉先生が説明してくれた。

先生は4曲全部が好きで,飽きるほどこのCDを聴きつくしたらしい。

檻に入れられた象が描かれた暗いCDジャケットを眺めていたら,閻魔先輩が後ろから声をかけてきた。

「なんだそれ」

「CDです」

「いや,それは分かるけどさ。誰の曲??」

「すとれいてなーっていうロックバンドらしいです」

「初めて聞いた,そのバンド」

閻魔先輩はわたしの手にあるCDを後ろから興味深げに見ていた。

「あんぬさんそれ,芭蕉さんから借りたんですよね??」

宿題をしていた曽良くんが聞いてきた。

「うん,そう。曽良くんは芭蕉先生がこのCD好きなの知ってたんだ??」

「まぁ。昔からあの人とは付き合いがあるんで」

曽良くんは近くに置いてあった飴を手にとって口に入れた。

「芭蕉先生って変わってるよね」

閻魔先輩が頭の後ろで腕を組みながら言った。

「ええ,変人ですよ」

「確かにちょっと掴めないとこがあるような。こんな暗いジャケットのCD持ってたりするし」

わたしはまたCDを見つめる。
先生の性格とは真逆の雰囲気のそれは,異様にわたしをそそらせる。

「芭蕉さんがそのCDを好きな理由があるんですよ。それは…」

曽良くんが話し始めたそのとき,ドアが開いて,話題になっていた本人が入ってきた。

「やぁやぁ。みんな元気かな??飴をみんなにあげようと思って」

「飴ならありますよ。ほら」

曽良くんが,テーブルの上にある,いちご味の飴の山を指し,それを見て先生は残念そうな顔をした。

「ああ,そっか。じゃあ1人で食べるよ」

「先生良かったらわたしにください」

「あんぬちゃんいる??コーヒー味」

「オレもいる!先生ください」

手をあげて言う閻魔先輩。

「いちご味に飽きたんで,それもいります」

曽良くんも言う。いちご味が飽きたと言う曽良くんの,口の中のいちご飴はまだ1個目だということをわたしは知っている。

曽良くんは不器用で優しいのだ。

コンビニにジャンプを買いに行った,太子先輩と妹子の分も先生から貰う。(鬼男はクラスの友達と遊ぶ約束があって部活を休んだ)

先生は嬉しそうに笑っていた。


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