学校はお勉強するところ

□the past
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「せーんせ」

みんなが部室から出た後わたしは職員室に行った。
先生は少し驚いたような顔をしてわたしを見た。

「あんぬちゃん,帰ってなかったの??」

「はい。先生に用があってきたんです」

「ん??なにかな??」

「先生に貸してもらったCDのことなんですけど,曽良くんがあのCDの曲を先生が好きな理由があるって言ってて。なにか思い出の曲なのかなっと聞きたいと思いまして」

「ああ…」

先生は一言声を漏らして黙った。

しんと静かになった。
この沈黙はなんなのだろう。
わたしは聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか。

「そっか,うん。あんぬちゃんになら話してもいいかな」

先生は独り言を言った。
そうしてわたしのほうに顔を向けてにこりと笑う。

「あのCDは先生が昔,恋人からもらったものなんだ」

先生は握っていたペンを静かに机に置いた。

「曽良くんにもこの話はしてないんだけど。その恋人がすごく好きな曲だから私にくれると言って。聴いたんだけどすごく良かった。そのCDをもらったあと,彼女が私の前から姿を消したんだ」

「え…」

先生は小さく笑う。

「彼女はね,他に好きな人がいたんだ。好きな人と婚約をしていて,その人の元にいっちゃったんだ」

悲しい話をしているはずなのに,それを笑って話す先生。

「彼女と結婚考えてたんだよね。最初はショックだったけど,彼女が幸せならいいって思えるようになった」

「先生はその恋人のこと少しも憎んではいないんですか??」

わたしの問いをゆっくり飲み込んでいるように見えた。

先生ははっきりと「うん」と言った。



次の日の放課後,本を読んでいた曽良くんに聞いた。

曽良くんは,先生に十数年前,最愛の恋人がいたことを知っていた。

先生はその恋人と別れて以降,恋愛をしている様子がないらしい。

先生は引きずっているんだろうか。

「今はなんでもないことだよ」っていうように話していた先生のあの様子を思い出すと胸が痛んだ。



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