学校はお勉強するところ

□the past
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「あんぬ元気なくない??」

数学の宿題をやる手を止め,鬼男が言う。

「そんなこと,ないよ」

笑顔を交えて答えた。


次の日。
どんよりした曇りの水曜日だった。

朝のホームルーム,担任の半蔵先生が告げた。

「さ来週の水曜日,期末テストが始まります」

爽やかな笑みを浮かべて淡々と嫌な知らせをする半蔵先生。
落胆する声が周囲から聞こえてきた。
わたしの気分もさらに落ち込む。

「期末に向けて今から取りかかりましょう。それともう一つ。今日の3限の古典は松尾先生が代理で来てくださることになりました」

「松尾先生か」

「あの人面白いよね」

周りが芭蕉先生が代わりに来ることを快く思っているように,わたしもとても嬉しいのに,なぜかいつもよりも盛り上がらない。本当に嬉しいのに…。


芭蕉先生の古典は,先生の陽気なあいさつから始まった。

「こんにちは!初めましての人もいるかな??初めまして!馬子先生の授業より上手く教えられないけど松尾50分間頑張るのでよろしくね!」

周りにお花を飛ばしているみたい。
可愛らしい笑顔を浮かべている。

男子も女子もきっと先生を見て癒やされているに違いない。

(授業ちゃんと聞かなきゃ)

いや,いつもちゃんと聞いてはいるのだけれど。
なんてったってあの厳格な馬子先生の授業だ。

それにしても芭蕉先生の授業は明るくてふわふわしてる。

ときどき授業と関係のない話をしては生徒を笑かしている。

あの明るい笑顔に先生はいろんな思いを隠しているのかな??
誰でも何かしらの感情や思いを自分の中だけで留めるけれど,それ以上に大きい感情を隠しているような気がする。

先生を見てると,こっちが泣きたくなる。

放課後の習字部の活動。
先生はいつも通りやってくる。
先生はみんなにあいさつをしてから,わたしに手招きした。

わたしは不思議に思いながらも先生に誘導されるまま廊下に出た。

「ごめんねあんぬちゃん,昨日あんな話して。あんぬちゃんが授業中ずっと元気なかったの,私のせいだよね」

芭蕉先生がさも申し訳なさそうに謝った。

「いえ,全然です。ていうか元気もありますし」

笑って否定する。
先生はそれでも眉を下げてわたしを見ているから困った。



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