学校はお勉強するところ

□特別なプリント
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家に帰ってご飯を食べたら机に向かう。
机に向かったら教科書とドリルを取り出してシャーペンを握る。

自分でもレアだと思ってる。
こんなに本格的にテスト勉強を始めるのは高校受験以来だ。

だってだってだって,期末だっていうのに数学どころか古典まで赤点になったらどうなるんだ。
通信表に赤点がついたら夏休み補習(2教科分)に再テスト。
そんな地獄に行きたくない。

そして曽良くんと芭蕉先生に指導をお願いした分,自分でも頑張らなければならない。
バカなわたしでもそこはちゃんと,そう思う。

普段めったに使わない脳みそが突然活用されてこめかみが痛い。

肩が凝ったり眠くなったりしたけどわたしは手を止めなかった。





「あんぬ目の下,クマすごいよ」

「そう??」

「頑張ってるんだな」

勉強漬けの毎日を過ごす3日目に鬼男が感心するように言った。

今日は芭蕉先生が古典を教えてくれる日。
昨日の夜,自分で予習して分からないとこに付箋してきた。

静かな部室に先生がやってくる。
先生はわたしのとこにきて「分からないとこ,ある??」と聞いてきた。

「はい。ここの部分とそれから…」

付箋を付けたところ全部,先生に見せていった。

「どれどれ…」

先生がわたしの隣に座った。
先生は,柔らかい声で説明し始めた。





「〜だからここはこうするんだ」

「なるほど」

「この接続詞は已然形なんだ…ほらこの表にもあるでしょ」

「本当だ。先生,解けました!」

「良かったぁ」

芭蕉先生の教え方はとても分かりやすかった。
つまづいている根本から丁寧に教えてくれた。

「先生,ありがとうございました」

「いいえ。また分からないとこあったら言って。いつでも教えるからね」

先生はにこっと笑った。

部室はいつの間にかわたしと先生しかいなくて少し緊張。
オレンジ色に染まる夕日が先生の顔を照らしている。
その顔が綺麗で,どきどき。

「先生は,モテるんでしょうね」

「ええ!モテないよ,全然。事実,本当に」

「曽良くんが年下にモテるって言ってたじゃないですか」

「そんなの嘘に決まってるでしょ」

先生は頬をほんのり赤く染めて焦りながら言う。

「先生が嘘ついてるんじゃないですか。とっても優しい先生を好きになる人,たくさんいるに決まってる」

「そんなことないよ。もう,あんぬちゃんまで」

先生は自分の頭をかく。
おちゃめな姿だったけどイラついてしまう。


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