学校はお勉強するところ

□しあわせな夢
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「失礼します」

職員室のドアを開ける。
中には先生たちがいる様子がなく。
でも芭蕉先生はまだ残ってるはずだと先生の席のほうを見ると,先生はいた。

そろそろと中に入って先生のとこに近寄った。

先生は机にうつぶせになって寝ていた。

微かな寝息が聞こえる。
すぅすぅと可愛い寝息。
一瞬起こそうと思ったが,先生が起きるまで待っていようと,隣の,他の先生の席についた。

先生はおじさんという年なのに,寝顔が子供みたい。

「ん,ありがとう…」

口を緩ませながら寝言,言ってる。
何に感謝しているのだろう。

「行っちゃうの…??私なんかした…??ごめん。本当に,ごめん…」

「…行かないでくれよ」

先生の声がだんだんと,蚊の鳴くようなか細い声になっていた。
目の端に滲んでいる涙が見えた。

胸が締め付けられると同時,わたしは先生の手を握っていた。

(先生が悪い夢から醒めますように)

とうとう先生の頬に一筋の涙が伝った。

(この人の夢が,幸せな夢に変わりますように…)








「あんぬちゃん,起きて。外真っ暗だよ。お〜い」

柔らかい声に目が覚めた。窓の外は真っ暗。夜になっていた。

「びっくりしたよ。起きたら隣にあんぬちゃんがいるんだもん」

先生は笑っていた。

「ずいぶん気持ち良さそうに寝てたから,起こすに起こせなくて。良く眠れたかい??」

おかしそうに笑いながら尋ねてきた。
とりあえず「はい」と答える。

『先生は,良く眠れましたか??どんな夢,見たんですか??』

聞きたいけれど,聞けない。
先生の涙を思い出して苦しくなった。


「ていうかあんぬちゃん,私になにか用があったの??」

「はい。先生がくれた問題プリントのお礼言いたくて。ありがとうございます」

「そんなそんな。プリント解けた??」

「80点でした」

「すごい!期末は大丈夫そうだね!」

先生の曇りない笑顔に胸がじんじんと疼いた。


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