□Doubles
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「まーたホームランかよぉ!河村ァァ!!
 ったく、このクソバカ力ァ!!」

「お前もぉテニスむいてねぇから
 はやく退部しろって!!!」


先輩達に散々言われて、確かになあと自分でもそう思った。
悔しいとかのレベルじゃなくて、本当に俺はテニスに向いてないんだなあと。
実際、同じスポーツをしてても、空手なんかでここまで言われた事もなかったし…


「河村クン」


その時、
誰かがパタパタと駆け寄って来て、ニコニコと笑いながらこっそりと言った。

「さっきの球。あのパワーでコート内に入ってたら本当にすごいよ!誰も返せないって!先輩達に言われてたみたいだけど、僕は河村クンの真っ直ぐなテニス大好きだな!だからドンマイ!頑張ってね」

自分よりも頭一個分くらい小さく細っこい同級生にそう励まされた。


単純な俺はただただ単純に嬉しい。


「あっ、ありがとう」

「ふふふ。ねえ、河村クン。
いつか僕とダブルスしようね」


女の子みたいに可愛い笑顔で
そんなこと言われて、俺は少し照れた。

彼の名前は不二周助と言った。



「不二って実はすごい奴だったんだな…」



小学生の頃からテニスクラブに通っていたという不二は抜群のテニスセンスを持っていて、天才の呼称はすぐに彼のモノになり学校の内外問わず話題になった。

けれど彼は勝敗に執着するタイプでなく、むしろ闘争心を隠しているように見えた。何故かなんて知らないしわからないけど…

俺はそんな不二の優しく穏やかな性分が単純に大好きだったし、不二も不二でのん気で頑固な俺を随分と信頼してくれた。

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