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□写真整理と暗室の怖い話
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コンコンとドアを叩く音がした。
「裕太、お邪魔するよ」
兄貴が俺の部屋に入ってきて、ベットの上に座り、一人で自分の趣味の話をくっちゃべり、
満足したらフラフラと帰っていった。
(なんだったんだ…)
ふと思う。そういえば大体いつもこんな感じだ。俺から兄貴の部屋にはあまり行ったりしない。
こんなツンデレのままではいけない。
俺は大いに反省した。
夕飯後、部屋に上がった時、
お返しに兄貴の部屋に寄ってやろうと思いたち兄貴についてった。
「なんだこりゃ」
兄貴の部屋は現像された写真だらけで
足の踏み場がない。
「写真整理中だから。踏まないでね」
アルバムなんか作っても追い付かないくらい沢山ある。
「いいかげん紙焼きやめて
デジカメ&パソコンでやれよ…」
「PCはPCでデジカメデータ
が既に満杯なんだよねー。
あれも整理しないとー」
出かける度に何百枚と撮ってくるから…
(しかも似たような写真ばかり)
散らばった写真を見わたせば、
意味のなさそうな風景写真の他に、青学テニス部メンバーが笑顔を向けてる写真なんかもチラホラあったりして…
家族の写真がないじゃん。
「か、母さんや姉貴くらい撮ってやれよ」
「撮ってるよ?
全部本人達が貰ってくれるから
ココにはないだけで」
「ププッ…姉貴は見合い用だな…」
「姉さんに殺されるよ…クスッ」
ちょっと前までは、毎年何かの記念日にかこつけて家族で写真館に出向いては、家族写真を撮ったものだが、ここ数年はそういう事をしてないなと気づく…
「そうだ。明日の写真館のおじいちゃんとこ行って暗室貸してもらう予定なんだけど、裕太も行こうよ。一時間位の作業だからさ」
「…やだ。アソコ、くせえもん」
「確かに停止液に酢酸使うからねー」
い、いや…もっと強く誘えよ。
もっと強く押してくれれば…
つ、着いてってやってもいいんだぜ?
「…お前、酸っぱいの苦手なくせによく平気だな」
「マスクしてれば大丈夫だよ」
「ふぅん」
「エアコンついてるから快適だし」
「…暗室って暗いし陰気臭いし、
俺はすることねえし…」
俺ってば、着いてってもいいと思ってるのに…なんでこんな素直じゃないんだ…っ?
「お化けや幽霊なら
僕が追い払ってあげるから、
怖がらなくても大丈夫だよ?」
兄貴がニコリと笑う。
「や、や、やっぱ出るのかっ!!?」
「…でも悪い霊じゃないよ」
違うだろ。
否定する場所そこじゃねえだろっ
「あ、そうそう。
合宿の時とった写真でさっ、
エクトプラズムと背後霊が
写ってる写真がここにー…」
兄貴が何やら俺に見せたいらしい写真を
キョロキョロと探しはじめた。
「これこれ。
長時間露光と多重露出で狙った写真なんだけど。
あれ?
裕太が消えた…」
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