四天夢

□彼氏は。
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「ごめん!待ったでしょ!?」

「慣れとるから大丈夫です」

「そっか。じゃあ行こっ!」

「はい」



今日は久しぶりのデートでテンションも上がってる。それは私だけで、面倒くさそうに隣を歩いている彼氏・財前光くん。日頃の部活で疲れて眠いのかさっきから何度もあくびをしている。そんな彼を見るとデートに誘わなきゃ良かったって思う。今日はあまり連れ回さないようにしなきゃ。



「光、どこに行きたい?」

「たまこさんの行きたいところでいいっすよ」

「私は後でいいよ。先に光の行きたいところ行こう?」

「じゃあCD見たいんで…」



光の要望でCDショップに行くと、私のそばを離れて一人でCDを探しに行った。残された私は適当にそこら辺のCDを眺めて光を待つことにした。















しばらくすればCDを購入したのか袋を手からぶら下げてやってきた。

「いいの見つかった?」

「はい」

彼が少し微笑んでCDを見つめたのにつられて私も微笑んだ。

「次は?」

「…ジーンズ見たいです」

「いいよ、お店近いし行こうか」



CDショップを出てジーンズ屋に向かった。その間、手を繋ぐことも話し掛けることもなく光はただ隣を歩いた。

「そういえば私、光にジーンズ選んでもらいたい!」

店に入るなり光の後を追いながら棚に並べられるジーンズを見てひらめいた。光はセンスいいしきっといいのを選んでくれるに違いない!

「え…だめ、です」

戸惑った様子で私とジーンズを見比べてたけど急に断られた。

「なんで?」

「…嫌やから、っす」

「……そっか!」

嫌…かぁ。なんでかは聞いてないけどやっぱり、ちょっとショック…。


結局、光は見るだけ見てジーンズを買わずに次の場所に行こうとした。







「ちょっとお腹空いたね」

「…はい」

「なに食べたい?今ならまだどこも混んでないと思うよ」

「……っ」

「…ぜんざい?白玉のついたやつの…?」

「はいっ」

こくこく、と頷くからなんだか可愛らしくなってちょっと沈んでた気分も上がった。少し歩けばお昼の時間になって人も多くなってしまった。でも人混みが苦手な彼は、めずらしく気にせずに頼んだぜんざいを口に運んでいる。

「あ、ここのクーポン券あるから私が払うね」

「えっ…あ、どもっす…」

私も適当に注文して食べればお腹も膨れてしばらくは歩きたくない感じ。光も大好きなぜんざい食べれて満足そう。




「次はどこ行こうか…?」

「たまこさんは?たまこさんの行きたいところ行きましょ」


まさか聞かれるとは思わなくて思わず目を見開いた。私が行きたいところなんて大概、男子が入りにくそうな雑貨屋。きっと嫌な顔されるよね。


「うーん…ゲーセンかな?」

妥当なところを言ってみた。ゲーセンなら光も友達と行ってるし、いいかな。

「…ゲーセンすか…」


なんだか難しい顔をしたけど、すぐにいつもの表情のない顔に戻って歩きだした。
なんか、不機嫌?

















ゲーセンに着いても特にやりたいものなんかなくて、ただ立っていれば光が手を引っぱった。



「…光?」


向かう先はゲーセンの外。せっかく来たのにどうしたんだろう?


「ほんまはどこ行きたいんすか?」

「えっ?」


嘘がばれた。
なんでわかったんだろう。


「もしかして、飽きたんすか?」

「そういうわけじゃないけど…急にどうしたの?」


「今日は…俺がリードしてやろうと思ってたんすけど、どんどんたまこさんのペースに乗っていってしもて…」

「そんな、別にいいのに。部活で疲れてるし私の我が儘で連れ回っても暇かなって思って…あ!それに誘ったの私だし!」

まぁデートはいつも私が誘ってるんだけどね。


「ほんまは…!ほんまは俺が誘いたかったんす。でもたまこさん、忙しいかな思てなかなか言い出せなかったりして…。今日だってまずはたまこさんの行きたいところに連れていこうって思ってて…しかもたまこさんあんまりCD聴かへんのにCD見たいなんて言うて暇にさせて…、ほんまはジーンズも選びたかったんやけど金なくてプレゼントなんてできへんし…っ、お昼も、俺が払うはずやのに払ってもらって…ほんまに俺、彼氏としておかしいわ…」


いつもは口数少ない光があまり話さない自分の気持ちを言ってくれた。


「そんなに考えてくれてたんだね嬉しい」

俯いた光の頭を撫でるとパッと顔を上げた。


「すんません、こんなんで…」

「うーん、ちょっと男らしくないね!」

「…う」

「じゃあ…ここでキスしてくれたら許す」

「えっ…こ、ここっすか?」

「うん」


じーっと見つめて唇が重なるのを待つ。



「…目、目つぶってや」

改めて見つめられるとなんだか恥ずかしい。思わず赤くなっちゃった。
私がなかなか目を閉じないせいか光の片手で目を塞がれた。それでも目を閉じるわけでもなく暗い視界の中、光の動きを感じる。光の手が少しずれたと思うと唇が重なった。









しかも少し長め。











ゆっくりと唇が離れて、視界も明るくなった。光はどんな顔してるかなって覗いて見るけど、長い前髪で隠れて見えなかった。たぶん光も恥ずかしいんだね。



「どこ、行きます…?」

「可愛い雑貨屋!」

「やだなぁ…俺入りにくいですやん」

「いーじゃん!」

「ほな行きましょ」



私は差し出された光の手を握った。







end.



( ゚∀゚)ノ

甘なのか!これは甘なのかあああああ!





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