立海夢

□嘘つき
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目の前には赤い髪のちっこい友達が不服そうにこっちを見ながら、ケーキを食べている。


「おい、食わねーのかよぃ」

「…ゲーセンかと思ったらケーキバイキングとはな…」

たまこと帰れば良かったなり…。

「なぁ…今さらなんだけどよ、彼女…今ごろ寂しいんじゃねぇの?」

「だったら誘うんじゃない」

「いや、だって、てかさ!てかさてかさてかさ!絶対寂しいって!泣いてるって!」

バン、と音を立てて立ち上がるなり口から食べかすを飛ばしながら言うから、何をそんなに興奮してるんだと思った。


「落ち着け。なんでそう思うんじゃ?」

「勘」

「迷惑な奴ぜよ、まったく」

「だってさ、見た?彼女の顔」

「毎日見とるぜよ」

「さっきのだよ」

「ガン見ぜよ」

「ばか、顔だけ見るんじゃねぇよ。表情も読み取れよ」

「了解した、みたいな顔だったぜよ」

「………」

いきなり黙りこくったブン太。何か意見があるような顔でこちらを見てくる。


「なんじゃ?」

「お前ってほんとに彼氏なの?」






















目が赤い。
ぶっさいく。


家についてベッドに転がりながら泣き止んだひどい顔を鏡で見た。
目の周りが赤く腫れて目が開いてない。頬にはうっすらと涙の痕。

「……別れてください」

言いたいけど、言えない言葉を何度も口に出してみる。
だけど、
やっぱり別れたくない気持ちが邪魔してまた視界が歪む。




ピンポーン。

そんなところに来訪者。
こんなにひどい顔をさらけ出すほど勇者じゃない。


ピンポーン。

居留守です。
傷心中です。
ドアの向こうにいるわからない来訪者に出ていってと訴えかける。

「宅配便でーす」


宅配便?
これは出ないと後でお母さんに怒られちゃう。
でもこんな顔だし…。


「すいませーん!」

「はーい!」


つい条件反射で答えてしまった。なにやってんだ、私。
これは出ていくしかないと部屋から出ていき玄関まで行くと、前髪で腫れた目を隠してからゆっくりと扉を開けた。



「たまこ!」


宅配の人から名指しで呼ばれた。
なんで?と思って見てみれば、

仁王くんだった。

どうして彼がここにいるのか、なぜ慌てているのかよくわからなかった。
それと同時になにか嫌な予感がした。








仁王くんは私に話があるから来たらしい。
ここじゃ話せないと近くの川岸のベンチに来た。
3人ほど座れるベンチに真ん中をぽつんと開けて両端に座った。


「ブン太くんとは楽しめた?ゲーセンにでも行ったの?」

「……ケーキバイキングじゃった」

「ケーキバイキング…おいしかった?」

「俺は食っちょらん」

「…そう、おいしそうだった?」

「さぁな」

「……」

「……」

「………」

「…すまんかった」


どうでもいい問い掛けに、いつもと違う様子で返答してきた仁王くんが、沈黙を破って謝ってきた。

「え…?」

「ブン太の方に行って悪かった」


何を謝ったかと思えばそんなことか。仁王くんにとっては、改めて謝ることじゃないはず…。

「なんで今さら謝るの?」

「ブン太に言われて気づいた。たまこが無理して笑ってるって、泣いてるんじゃないかって」

鋭いなぁ、ブン太くん。

「ブン太の言うとおり来てみれば空気は重いわ、目は腫らしてるし…。俺はたまこのこと全然知らなかったなり…彼氏失格じゃな、俺」


自嘲気味に笑ってる仁王くんはいつもの仁王くんとは違った。自信なさ気にうなだれて、後悔してる姿は私がずっと見たかった、嘘じゃないほうの仁王くんだった。


「仁王くんだ…」

「は……?」

「なんか違うと思ったら仁王くんだったんだね」

「何言ってるんじゃたまこ?」

「私もね、仁王くんのこと全然分かってなかったの。それで付き合ってたの。仁王くんは今まで私の前では自分の性格に嘘ついてたでしょ?」

「!」

仁王くんの顔が一瞬、引き攣った。

「はは、当たった」

「なんで…」

「ブン太くんたちとの話し方とか違うし、笑顔が胡散臭かったから…かな。気づいたときは悲しかったよ、遊びなのかなって」

「ばかっ、…違うぜよ!」

いきなり声を荒げて立ち上がった。いつもの仁王くんじゃない、初めて。

「嘘ついてたのは、…どうやっていたらいいかわからんから…」

「どうやってって、そのままでいてほしかったんだけど」

「このままいてたまこに嫌われるのが嫌じゃったから、嘘ついてたんじゃ」

「私は、どんな仁王くんであれ…嘘つかれる方が嫌。」

「……」

さっきの勢いがなくなり下を向いてベンチに静かに座った。


「それに、優しくして笑顔でいればたまこは好きでいてくれると思ってた」

「なんで?」

「だって、褒めてくれたじゃろう?笑顔が素敵だって…」

まだ付き合う前の話、ちゃんと覚えてくれてたんだ…。
確かに、初めて会った頃の仁王くんは嘘ついてなかった。だから優しさも笑顔も好きだったんだ。

「優しいところが好きって言ってくれたじゃろ?だから、そうしてればたまこは俺のこともっと好きになって、もっと見てくれるようになるって思って…ずっとそうしていたんじゃが、嫌だったか」

「嘘が嫌なだけだよ…私に向けられてる笑顔はさ、作りものじゃん」

「…そうか」

「うん…」


また長い沈黙がやってきた。だけど破ったのは私。


「別れようか」


軽く言ったつもりだったけど、だめだつらい。この後のことを考えると涙が出そうになっちゃうけど、唇噛み締めて堪えた。


「えっ…?」

目を丸くして本気かと問い掛けて来るような表情の仁王くん。

「だってさ…お互いがお互いを知らないんだもん、この先続けたってうまく行きっこないよ」

わざと明るい調子で言う。その方が仁王くんも頷いてくれると思ったから。

「嫌じゃ」

「あのね仁王くん、私たちは「たまこは俺と別れたいんか?」

言葉を遮られ言われたことに、ひどく胸が締め付けられた。
そういうわけじゃない。
違う。違うの。
別れたいんじゃない、別れなきゃいけないの。

「…別れたいわけない…!私だって仁王くんといつまでもいたいけど、でも、うまくいかないんだもん…無理だよ」

「なんで?」

「なんでってだからお互いがお互いを知らな「たまこは嘘が嫌い」

「…?」

「今、知ったこともあるぜよ」

「何が言いたいの?」

「お互いを知らないとか言うちょるが…だったら知ればいいじゃろ?今からでも遅くはない、いやむしろ今から始めればいいんじゃなか?」

今から始める?

仁王くんが言い終わると、立ち上がり私の前まで来た。
そして手を差し出しこう言った。

「付き合うてくんしゃい」


「えっ…?」


「素のままの俺を受け止めてくれるんじゃったら、この手を取ってくれんかの?そしたらお前さんには遠慮はしないぜよ」

「………………本当に?作り笑いもしない?態度変えない?…まだ、好きでいてくれる?」


こんなにわがままを言って飽きられるかと、恐る恐る仁王くんを見上げれば、予想していた表情とは違い微笑んでいた。
そして私の手を引っ張り、立ち上げられたと思いきや抱きしめられた。


「好きで告白しとるんじゃ、バカなことを聞くのう」

耳元でくすっ、と短く笑った声が聞こえると急に安心して涙がまた流れた。


「もう泣かんでくれんか?」

「…止まらないの!」

「たまこは泣き虫だったんじゃの」

そう言ってまた笑うと、より一層抱きしめてくれた。
だから私もお返しに、強く抱きしめた。





( ゚∀゚)ノ

大変遅くなってごめんね!
待たせた挙げ句、内容も変という。
慣れない書き方をするのはやめよう(´・ω・`)
リクエストありがとうねぇ!


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