立海夢
□変化
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「まさはる、すきーっ」
「ぼくもたまこちゃんすき!」
小さい頃にした告白って、意外と覚えていて、けれどそのときの関係は続かないもの。
それは今の私たちにおいても言える。
前方から仁王雅治。
隣の男が囁いた。
「おい、お前の彼氏がやってくるぜ」
「ばーか。あんなの彼氏じゃないから。もっと真面目な奴に私はときめくの」
囁いた憎たらしいその口を引っ張ってやった。
昔の雅治は真面目なはずだった。今はもう、二股は常識、毎日違う女の香水を纏ってる、女性教師を妊娠させたなんていう噂が立つほどの遊び人。昔の純真無垢な面影はなくなった。
そう感じるのは、私が単に過去に取り残されているからかもしれない。
雅治は変わった。その形が遊び人というだけで至って自然なものかもしれない。
その反対に、私は変わらないし雅治への想いも幼い頃のまま…。私は変わるべきなのかな?
翌日、退屈な授業を抜け出し屋上で寝ていれば、雅治が来た。
「あんたもサボり?」
「…なんじゃお前さんか。びっくりさせんでくれ」
まあサボりってところぜよ、と苦笑しながら隣に座る。そのときに香った、ツンとくる匂い。
「雅治、また香水変えたの?」
「…ほぉ…よくわかったのぅ。さすがなもんじゃ。どいつもこいつもまた違う女と寝たのかと言ってきて…」
「女がつけるような匂いじゃないし。てか、そう言われるのも納得行くけどね」
「悲しいこと言うのぅ」
「本当のことでしょ。この前付き合った彼女とは別れて、次は不特定多数の子と遊んで…」
「お前さんだってそうじゃろう?いろんな男とつるんで…」
「あれは友達!」
「じゃあ俺のだって友達ぜよ」
「あんたと一緒にしないで。私はあんたみたいな理由でつるんでるんじゃないの。てか、私だって好きで一緒にいるわけじゃないし…」
「それはすまんな」
本当に謝ってるのか。薄ら笑いなんか浮かべて。
いつからなんだろう、雅治の周りに女がたくさん出始めたのは。中学入ってすぐ?初めて彼女ができて、それでもすぐに別れて、次の日には新しい彼女ができて…。
思い出してるうちに疑問ができた。
「ねえ、なんで私には手出さないの?」
唯一の幼なじみで雅治のことを誰よりも知っている。彼氏もいないしずっと雅治のことを好きだってすると、利用する女としてはじゅうぶんな役だと思う。
だけど今まで、一度としてそんな話や展開はなかった。あくまで幼なじみ、そんな扱い。
気になる真相は私の想いを砕くようなものだった。
「好いてないから」
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