青学夢

□そういうこと
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「越前くーん!!」

「?」

「おはよう!」

はぁ、と越前君はため息をつくと、けだるそうにおはよう、と言った。
ううーん!そんな越前くんもす・て・き!
彼とはクラスが違うけれど、一目見たときからトキメキが止まらず、時間があれば会いに行くほどの粘着さ…ではなく一途さ!
テニス部の朝練に参加する越前君に合わせて、文化部で朝の弱い私も体にムチ打って時間を合わせて登校しているのだ。私ってば健気!

「よく見つけるね」

「え?」

「いや、アンタいつも俺を見つけるからさ、…ストーカー?」

「!!ひっどーい!これはすべて越前君に好きになってもらうために頑張ってるコト!」

とか言って自分でもよく会うなぁって思ってる。
でもそれは偶然なんかじゃなくて…自然と目が彼を探してしまうからなのお!きゃー!私ってば必死☆
まあ、一度面識があまりないときに告白してるんだけど、見事に「興味ないから」って振られたんだよね。

それでも諦められなくて、必死に彼のクラスに通ったり、部活中に覗きに行ったりしてジワジワと認知度を上げた。
今となっては女子の中ではまあまあ仲が良い方だと思う。そもそも彼ってモテるけどあまり女友達いなさそうだからだけど…。


「まぁ、いいけど。俺もアンタに会いたいし」

「え…それって!?」

聞き間違いか?会いたいって言ってたよね?
そんな嬉しい言葉、聞き間違いなんかにしたくない!真意を聞きたい!

彼は私の言葉を無視して足早に玄関へ向かう。

「越前君、それってつまり…どういうこと!?」

私も彼を追いかける。

「越前く―――

追いつくと、彼は振り返って私の唇に人差し指を当て言葉を制止してきた。
真剣ながらもどこか余裕そうな目にじっと見つめられ、恥ずかしくなり私の顔が熱くなるのがわかった。
私の唇に当てられた指がゆっくりと離れていき、徐々に彼の顔が近づいてくる。

これってもしかしてキスされる…!?

不自然な顔の近さにそう予想するが、突然のことすぎてどうしていいかわからず、思わずギュっと目を閉じる。

しかし少し待っても唇に何の感触もなく、不思議に思ってそろりと目を開ける。

「キスされると思った?」

私の様子を見た彼はいたずらっぽく笑い、体を離して靴を履き替えた。

「い、いまの…なんだったの…?」

何かが起こる雰囲気の中、何事もなかったために拍子抜けし、頭も混乱中。

「俺のために必死だったから、なんか可愛いなと思ってイジワルした」

「…え、かわ…イジ…ワ……?」

何だ何だ何だ何だ???????
夢?!
あの越前君に可愛いって言われた!?
待て待て!それよりもさっきのがイジワルだと?
そんなことよりさっき言った、俺も会いたかったっていうのもまだちゃんと聞いてない!
ていうか越前君、私の唇に触れたよね!?

色々なことが頭の中でぐるぐると巡り、何から順番に整理していいかもわからず、靴箱へともたれかかった。

「つ、つまり…どういうことなの…」

まだ理解できていない私の言葉に振り向いた彼は、いつものクールな表情に戻っていた。

「つまり、そういうこと」





end.

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