海軍鳩

□02 一期一会
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「行ってらっしゃい」



『あぁ、行って来るぞ。ポッポー』



そう言って私の唇にチュッとキスをして出て行く。

完全に新婚じゃないか!うひひ。



さてと、少し片付けたら外へ行こうかな。



今は午前7時。
朝ごはんも終わってるし、さーて、どこ行こーか。



宛もなく歩いて道を覚える。

街は活気づいていて何だか愉しい。




「わっとっと」


「あはは、ごめんよ!」



子供が無邪気に走ってぶつかり、そして母親に叱られた。


これはドコも同じ光景だな。


海賊がいる世界だからスリだったりして、なんて思って一応所持品を見るが、何も変わっていなかった。


ここは平和だな。



それから一人ぶらぶらして、あっという間に半日が過ぎる。

道も覚えてきたから地図をほとんど見なくなった。



私だってやれば出来るんだぜ、なんて思って進み、そろそろ喉も乾いてきたから適当に店に入る事にした。



ドアをゆっくり開けると、そこは飲み屋だったみたいで大人の雰囲気が漂っていた。



「いらっしゃ……」



「………あ、すいませんここ飲み屋ですね。
間違えました」




一瞬戸惑った。

まさかのブルーノさんの店だったとは。



「何かお探しかな」



でもブルーノさんは私に声をかけ、取り敢えず正直に「喉が乾いたんで」と答えれば、彼はジュースも出せると言って招いてくれた。


知らないふりって結構気不味いんだけどな。



「オレンジ、アップル、パインがあるが何にします?」



「あ、じゃあ…アップルで」



彼は静かにジュースを用意し、私はストローをくわえる。



「お客さん、観光かい?」



ちぅ、と一口飲んだ所でブルーノさんからの質問。

なんか試験で試されてるような感覚です。



「えぇ、昨日越して来ました。
この街って綺麗だからとても嬉しくって」



そう言うと彼はニコッと笑って一言「そうか」といい、今度は他のお客と会話を始める。

ううう、気不味い。

居た堪れない。



ジュース一杯飲めれば良かったので、すぐに店を出ることにした。



「おや、もうお帰りで」



「えぇ、ちょっと何か飲みたかっただけなんで。
美味しかったです」



「まいど」



代金を払い、さっさとそこから立ち去る。

あー。驚いた。



それから夕日が沈み始めたので私は家に帰る。

夕食を準備したりしていると、ルッチさんが帰ってきた。




「お帰りなさい」



「あぁ」



腹話術じゃなく普通にそう返事をし、シルクハットを壁にかける。

私はタオルを渡し、お風呂どうぞと言って持ち場に戻る―――が、



「一緒に入るぞ」



「うわ、ちょ!!」



私を担ぎ上げ、風呂場にやって来る。


それからがっつくようにキスをされて足に力が入らない。



「―――っぷは!!
ちょ、なんでそんなにがっつくのさ!」



やっと解放されたけど、彼は私の服に手をかけて脱がし始め、私は何とか抵抗する。

まぁ、無意味だけど。



「たまらなく欲情した」



「えぇえぇぇっ!!
何言ってるんですかちょっと!
『お帰りなさい』『お風呂どうぞ』しか言ってないんですが!!」



「…………そうだな」



そしたら何でか彼は少ししょぼんとして手を止める。

…まさか。



「その、まさか……
言って欲しい台詞…あったんですか?」



そしたら少し目が大きくなって数秒見詰めてきたので、私は思った台詞を言ってみた。



「ご飯にする?お風呂にする?
それとも……わたし?」



「お前と風呂」



答えると同時に抱きしめられ、私は面白くて笑ってしまう。



「ルッチさんそんな台詞待ってるなんて可愛いで―――っあ、ダメそこ………っ」




…………結局抵抗なんて出来なくてあっけなく喰われてしまった。

肉食系と一緒に住むと体力いるなぁと思った。




それからご飯を作っていたが、とても腰が痛い。



「次は気をつける、悪かった」



「私普通の人なんだから手加減してくださいって言ってるじゃないですか。
これで死んじゃったら私、成仏出来ませんって」



「セックスでは死なん」



「やめて下さいセクハラです」



はぁ、と息を吐いて皿に盛る。

なんと美食の街が近いからか、醤油や味噌がありました。

和、洋、中の料理ができるから、同じようなメニューだけにはならなそう。


今日はとってもありきたりだけど、肉じゃがとワカメの味噌汁、ポテトサラダにしてみた。


昨日は外で食べたけど、今日は初めて手料理を食べてもらうんで、かなーり緊張してる。


そんなに美味しいモノを作れるわけじゃないから、とても辛い。



「………食べさせたくない」



「ふざけるな、黙って持って来い。
不味くてもかまわん。
お前はいい加減に作ったわけではないだろう、それならいい」



…と、言いつつ彼はいつの間にか私の横にいて、ヒョイと一口食べてしまった。

うわぁぁぁぁぁあ!!

もっと料理覚えてりゃ良かった!!



「美味い。
……だが、これはお前の母親の味と少し違うな。
確か肉じゃがと言ったか」



「え!?
まさかウチで食べたことあったんですか!?」



「ある。
あと食べたのはシチューとお好み焼き…というものか。
あれも初めて食べたがかなり気に入ってる。
何度か作ろうとしたが、何が入っていたのか分からずできなくてな」



そんなことがあったとは……

うーん、思い出せないのが悔しい。



「でも良かった、食べられるなら。
ルッチさんは普段いいもの食べてるでしょうからかなり緊張しますって」



「お前がオレを想って作った物ならどんな物でも嬉しいさ」



「ルッチさん何気なくバカップル発言しやがりましたね。
ありがとう、嬉しいです大好きです」



自分もバカップル爆発しながらルッチさんに抱きつき、冷めない内に食べようとテーブルに運んだのだった。





 
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