「ああ土方さん、この子ですよ。尾形さんのお土産」 沖田はそう言ってくすくす笑った。 その隣には布団に横たわる少女の姿。 長い髪は結わずに下ろされ、足を惜し気もなくさらしている。 尾形の報告通り異国の服装だが、顔つきからして日本人であることは確かなようだ。 「見ねえ顔だな」 「ええ。どうします?この子」 「さあな。目が覚めないことには始まらん」 土方は気を失っている彼女の横に座り、まじまじと顔を見つめる。 綺麗な顔をしてるじゃないか、と思った。 なんとも言えない不思議な感覚に浸っていると、尾形が女の荷を持って部屋に入ってきた。 「副長、言われた通り彼女の荷物を改めたんですが…」 「どうした?」 「異国のものらしき本や筆記具、色のついた小さな写真など、俺には理解できないものばかりでして」 そう言って尾形は女の荷物を土方に渡す。 沖田は興味津々でそれを覗きこみ、いろいろと手にとっては喜んでいる。 「へえ。…あれ?これは何でしょう?」 沖田が取り出したのは四角い小箱のようなもの。 書いてある文字に触れてみると小箱に光が宿った。 「わあ、おもしろい!」 そう、これは文明が生んだ利器である携帯電話。 彼らが理解できないのは当たり前である。 「あまり触るな、総司。異国かぶれになっちまうぜ」 「それは喜べませんね。…おもしろいのになあ」 土方に諌められ沖田は渋々その小箱を元の場所に戻した。 「それにしても起きませんね、彼女」 尾形は心配げに彼女を見つめる。 その視線になぜか醜い感情を覚える土方。 「尾形、お前は隊務に戻れ。この女子は俺と総司でなんとかしよう」 「…わかりました」 尾形は彼女が心配だったが、副長命令には逆らえない。 後ろ髪を引かれる思いで部屋を出て行った。 「あれ、土方さん?もしかして…」 「うるさい!」 土方の様子に気付いた沖田はまたくすくすと笑った。 「全く、隅に置けませんね」 |