時間屋。

□時間屋。編
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「何でこんなに早く返ってくるんだよ……」

その紙にはこの高校生が書いたであろう鉛筆の文字と、赤ペンで丸やらバツやらが書かれていた。
要するにテスト用紙である。
つまり、彼もその「生徒」というわけなのだ。
そして、当然の如くその紙の右下には赤く数字が刻まれているのだった。
その数字はお世辞にも高いとは言えないもので、その上、左横には「追試」の文字が刻まれていた。

「折角この苦しみから解放されると思ったのに……」

本来ならばそのイベントを乗り越えてしまえば、暫くの間はもう苦しむ必要などないというのに、
彼は再びそれに立ち向かわなければならないらしい。
何故こんなことになってしまったのかは、彼の目の下に刻まれる隈がその理由を物語っていた。
これから再び待ち受けるその試練のことを思うと、自然と気が滅入ってくるのだろう。
こうなったのは自業自得であるのだが、やはり嫌なものは嫌なようで、
先にも増して負のオーラを漂わせながらトボトボと歩を進めている。
滅入ってくる気持ちを正に表現するように、より一層深い溜息をついた、その時だった。


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