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□x<1という不等式
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「フラウ……」

テイトはフラウの白い司教服の裾を掴む。暗闇の中でとても目立つ司教服は神聖的だ。

「んっ…」

フラウは振り向いてテイトの額に口づける。
テイトはフラウを抱きしめ、頭をフラウの胸の中に埋める

「テイト」

「・・・・・・」

フラウはテイトの頬を掴み、己のほうへ向かせる。
濡れた瞳は不安気に曇っていて、いつもの綺麗な翠玉とは程遠かった。

「……どうした?」

テイトは何かいいたげにフラウを見上げ、口を開きかけるが、唇を詰むんだ。

「何でもない…」

テイトの頬を涙が伝う。
フラウの両手にもその涙が伝い、線をつくった。

「何でもない奴が泣くかよ」

「っう・・・ぁ・・・」

フラウはテイトを離す。
テイトは俯き、手の甲で溢れてくる涙を拭うが、止まらない。


「テイト、どうかしたのか?」

「…ッ」

首を振るテイトに、フラウは掛ける言葉がなかった。



一分、十分、それ以上か経った後、テイトはゆっくりと口を開いた。

「何処にも…行くな……ッ誰にも会うな…!」

「……何言ってんだよ…お前は…」

フラウは泣き続けるテイトの頭を撫でる。
誰にも会うなと言われても、そんなこと無理に決まっているのに。

「だって…だってフラウは……!」

テイトは顔を上げる。


「テイト…?」

「だってフラウは…今まで色んな人たちと関わってきて…」




自分なんかその人たちに比べたらまだまだなんじゃないかって




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