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□心中
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────────初めて見た時







貴女は泣いていた──────────











その艶やかな黒髪を靡かせながら









貴女は満開の桜を見つめていた──────















「兄上に新しい正室?」

オウカは女中が告げたことに耳を疑う。
オウカの兄──アヤナミはオウカの幼少期、愛していた正室を亡くしたためにその後から側室すらとらなかったのだ。


「イヴ様に次ぐ……正室となるとさぞ上品な方なのでしょうねぇ。」

長年勤めている女中はイヴを世話したことさえある者だ。

「まあ、私には関係ないことであろう。」

オウカとアヤナミは、お互い無関心な兄妹だ。

オウカは「アヤナミの指図はうけたくないが、家を守るためならば政略結婚でもするという考え。

「ええ、ですが姫君とお歳もお近いようで。」

「私と歳が近い?誠か、それは…」

「そのようでございますが。」
「そうか…」

歳が近いという言葉は、オウカの頭の中に友という文字を連想させた。

「な……名前は何と言うのだ?」

「それはまだ………………ひ、姫君……そのぅ……」
「なんだ?」

女中はオウカの傍により、耳打ちする。

「なっ……!?」









オウカは廊下を早々と歩き、兄であるアヤナミの部屋へと向かう。

ピシャリと音のなるくらい力強く障子を開けた。

「どうかしたのか、オウカ。」
昔は静かに開けろ、やら礼法を覚えろだの言っていたアヤナミだが、最近は諦めたのだろう。注意してこない。

女の仕種とは思えない歩き方で、アヤナミの真正面に立つ。

「わ、私は遊女なんて絶対に認めません!」
「……」
「ゆ、遊女なんて汚らわしいっ!義姉とすら呼びたくない!」
全て言い切ると、オウカはぜーはー、と肩で息をした。


「それだけか?」

「そ………そうです…」

アヤナミは息を吐くと、鋭い紫色の瞳でオウカを見つめた。二人の間の沈黙、静寂。

「ならばお前は挙式に出席しないで良い。」

オウカはムッとして言い返す。
「言われなくとも、遊女なんかの挙式なんぞ出ない!」


オウカはそう言い放つと、部屋に戻っていった。









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