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□心中
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無事挙式も終え、歓声がオウカの耳に入る。
挙式に出席していないのはオウカだけで、今まで一人だったが、ぞろぞろと女中たちが戻ってくる。
「どうだったのだ?その……正室となる者は。」
「……申し訳ございません。領主様が正室様のお顔を見せられないようになさってしまい……」
「み、見られなかったのか!?」
「………え、ええ」
「兄上は何をお考えておられるのだ……?」
「お部屋もお近くでございますよ。」
女中が話題を変えようとしたのがわかる。
オウカは己の家に誇りをもっている。この家の名がけがれることだけは赦さない。
そんな彼女と新しい正室の仲が悪ければ、家中がピリピリとしてしまうだろう。
「うむ……」
オウカは何かを考えてから口を開く。
「少し下がってくれぬか…」
オウカの言葉通りに女中たちは下がったあと、オウカは庭に出る。
「顔を拝見できるかもしれぬ………」
紅の着物を着た少女は満開の桜を見つめる。
茶色の交じった黒髪は風により靡かれ、少女を一層目立たせる
「どうして………」
どうして
結婚を認めたの?
「遊女になる」ということにあなたは反対したじゃない
なのに
どうして─────────
少女は翡翠の瞳から滴を流した
丁寧に整えられた庭を歩くと、オウカは一人の少女が居ることに気づく。しかし見えるのは後ろ姿のみ。
(あの者か……?)
オウカが少女の顔を見ようと身を乗り出したら、ガサリと音がしてしまった。
「!!!」
「っ誰っ!?」
少女は振り向いて脚を思い切り開き、短剣をオウカに突き付けた。
その時
紫と翡翠が────────────
目が合った─────────
それが二人の出会い
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