long

□心中
2ページ/11ページ




無事挙式も終え、歓声がオウカの耳に入る。
挙式に出席していないのはオウカだけで、今まで一人だったが、ぞろぞろと女中たちが戻ってくる。

「どうだったのだ?その……正室となる者は。」

「……申し訳ございません。領主様が正室様のお顔を見せられないようになさってしまい……」
「み、見られなかったのか!?」
「………え、ええ」

「兄上は何をお考えておられるのだ……?」
「お部屋もお近くでございますよ。」

女中が話題を変えようとしたのがわかる。
オウカは己の家に誇りをもっている。この家の名がけがれることだけは赦さない。
そんな彼女と新しい正室の仲が悪ければ、家中がピリピリとしてしまうだろう。


「うむ……」

オウカは何かを考えてから口を開く。

「少し下がってくれぬか…」

オウカの言葉通りに女中たちは下がったあと、オウカは庭に出る。

「顔を拝見できるかもしれぬ………」





紅の着物を着た少女は満開の桜を見つめる。

茶色の交じった黒髪は風により靡かれ、少女を一層目立たせる


「どうして………」


どうして

結婚を認めたの?






「遊女になる」ということにあなたは反対したじゃない



なのに



どうして─────────




少女は翡翠の瞳から滴を流した


丁寧に整えられた庭を歩くと、オウカは一人の少女が居ることに気づく。しかし見えるのは後ろ姿のみ。

(あの者か……?)

オウカが少女の顔を見ようと身を乗り出したら、ガサリと音がしてしまった。
「!!!」

「っ誰っ!?」

少女は振り向いて脚を思い切り開き、短剣をオウカに突き付けた。



その時







紫と翡翠が────────────












目が合った─────────












それが二人の出会い
















.








.






.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ