ドラゴンと月〜貴方と私の恋物語〜
□最悪な出会い方
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「この先みたい・・・・」
落ち葉と湿った土が重なる道を進むにつれて、樹木の背は高くなり、森のように深くなる。
「やだな・・この雰囲気・・・え・・・・だ、誰か倒れてる!!?」
木々の隙間から月明かりで光る、少し開けた場所。
早まる胸の鼓動を抑えながら、ぼんやりと浮かび上がる物体に一歩一歩、近づく。
「男の・・・人?ひぃっ!!!」
大きく見開いた目に映し出されたのは
闇夜に溶ける逆立つ黒髪
服はボロボロに破け、無数の傷で血に塗れ横たわる体
目を疑う光景に全身の血が凍りつく。
「や・・・・だ・・誰・・か・・・・・」
逃げたくても脚は竦んで一歩も動けない
まるで足から根が生えたように・・・
ひんやりとした冬の夜の空気が、一層身体を震えさせた。
「・・・・・・・く・・う」
喉から搾り出すような微かな呻き声に、意識が現実に引き戻される。
「生きて・・るの!?」
息絶えてないことがわかると、恐怖心がほんの少し和らいだ。
「・・・・っ・・・何・・が・・・どう・・なって・・・」
「ちょっとしっかりして!!私の声聞こえる!!?」
歪む眉間、震える瞼に夢中で問いかけ始めた。
「誰だ・・・俺・・に気安く・・話しかけ・・・るな」
「よかった!もう大丈夫よ?すぐに救急車を呼ぶから!!」
「くっ・・余・・計なことを・・・俺に構う・・・な」
「な、何言ってるの!!あなたすごい怪我してるのよ??このままじゃ死んじゃうかもしれないん・・・・ちょっと!!?」
男は言葉を振り切り、傷だらけの体で必死に立ち上がった。
「俺は・・・サ・・イヤ人の王子だ・・・ぞ・・・・くっ・・この程度のことで・・・・くたばって・・・」
サイヤ人?
王子??
きっと混乱してるんだ訳が分からなくなってるみたい・・・・って・・え?
「ちょっ、待って!!」
定まらぬ焦点と激痛に耐えながら、よろよろと歩き出す体に、咄嗟に太く逞しい腕へと手を伸ばす。
「とにかく早く手当てをしないと手遅れになるわ!!」
「俺・・に・・・触る・・・な」
「きゃあ!!!」
男は意識を手放しグラリと崩れ落ちた。
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