ドラゴンと月〜貴方と私の恋物語〜
□水面下で模索
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「久しぶりにしては中々の出来映えね!何とか薬も使えたし〜」
少々巻きの甘い箇所を手直ししながら、ニンマリする満足な顔
あるだけテーブルに並んだ、ガーゼ、包帯、ピンセットに期限切れ寸前の薬品類
重傷かつ得体の知れない男の手当てを開始してから数十分・・・・・看護の仕事から遠ざかっていたものの、ブランクを感じさせない手つきで最後の処置を終えた。
「あとは」
集中する耳が捉える力強い心音
何の躊躇もなく、男の厚く逞しい胸を聴診器が滑っていく。
「ん〜・・・脈拍、呼吸も異常なさそうね」
引っ張り出してきた医療機器のモニターに目を巡らせ、頷き小さく呟いた。
「とりあえずこれで様子を見よう」
点滴の落ちる速度を微調整しながら、ふぅ・・と一息吐いた。
「本当だったら、こんな重傷者はやっぱりちゃんと治療すべきなんだけど・・・」
一仕事終えて、腰を下した椅子の上
下手に動いてみても、この傷だもん・・・
『通りすがりで助けただけで〜す♪』
じゃ、済まないわよね?きっと・・・。
警察沙汰にでもなったら・・・って立派に大事件でしょ!!これ!!
でも、ダメダメダメ!
ややこしい事に巻き込まれるのなんて、冗談じゃないよ〜!
だったら、やるしかないでしょ〜?
胸に熱く漲る情熱と正義感
「命にいい人も悪い人もないもん」
どんな状況下であっても、ほおっておくことは出来ない元医療人としての血がそうさせたんだと、妙に納得した。
それが素性も、身元も分からない人物であれば尚更のこと・・・。
にしても・・・この人・・・
視線を移した先では、静かに規則正しく寝息をたてる男
何処から来たのかな・・・?
この辺の人じゃないよね、あんまり見かけない顔だし・・・
今更だけど・・・私、もの凄いことに首突っ込んじゃってないよね??
いくら人助けっていっても、やり過ぎじゃ?
急に出始めた嫌な汗と感じる喉の渇き
それに、大きな傷跡がかなり多い・・・
このレベルの大きさだと並大抵なことで負えるもんじゃないでしょ?
ピッ、ピッ・・・
恐怖をあおる、部屋に小さく響く心音計
・・・・・本気でヤバイ商売してたりして
襲い続ける嫌な悪寒に耐えながらも、ゆっくりと外した視線を戻す。
不安を余所に変わらず深く眠る男
こんな時に不謹慎かな・・結構さ、カッコいいよね?
サイヤ人とか王子とか言ってたし、何処かの国の王子様!?
そういえば、寝顔も何処となく品があるような・・・・・。
凛々しい太い眉
すっと通った鼻筋
形の整った唇
ぐぅ〜
おいしそう・・・ってやだ、違うでしょ!?
「晩ご飯、まだだったんだっけ・・・当分目を覚まさないだろうから、何か食べてこよ〜♪」
空腹と何となくの気恥ずかしさを感じながらキッチンへと急いだ
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