『ブルマ…貴様というやつは…いい加減にしやがれっ!!』
ピッコロがブルマに怒鳴っている
「何よ!そんなに怒る事ないでしょ!毒じゃないんだから…!私だってまさかあの子がこんなに酒に弱いとは思わなかったのよ!」
神殿に遊びに来ていたブルマはちょっとした悪戯を思い付き、
彼女がいつも使っているカップにほんの少〜しお酒を入れたのだ。
彼女が口に含んだ瞬間、あっと言う間に眠ってしまったのだった。
「悪いけど私帰るわ。仕事もあるし…」
『…っ貴様、このままにしていくつもりか!?』
「あんたがベッドに運んであげればいいじゃない」
ブルマはピッコロにひらひらと手を振り、さっさと飛行機に乗り込んだ。
そしてニヤニヤしながら、
「ピッコロ、チャンス到来じゃない♪今逃したらもう次はないかもよ?」
『な…どういう意味だ!?』
「さぁてね〜じゃ頑張んなさい♪」
大きなエンジン音を立て、飛行機は飛び去った。
『くそ…あいつめ』
捨て台詞を吐き、ピッコロは神殿の中に入った。
さてと…
ピッコロはソファーに寝ている彼女を優しく抱き上げ、部屋へと運んだ。
甘い花の香りがピッコロの鼻をくすぐった。
“全く世話の焼かせるやつだ…”
彼女をベッドへ寝かせ、しばらく見つめた。
その時何故かブルマが言った事を思い出した。
「チャンス到来…か。けっ、くだらん」
マントを翻し、部屋から出ようとしたその時―
「…ピッコロさん?」
背後に寝ぼけた声が聞こえた。
『目が覚めたのか?』
振り向くと彼女はまた寝息を立てていた。
「寝言か…」
ふっと息をつき、ピッコロは再び顔を覗き込んだ。またあの花の香りがした。
花など全く興味がないが、嫌いな香りではない。むしろこれは好ましい―。
ピッコロはその香りを探るかの様に顔を近づけた。そして長い指で頬をなぞり、そのまま唇に触れた。
かつて破壊と殺戮を繰り返し、人々から何もかも奪った大魔王が、今はある少女の唇さえ奪えずにいる――
『オレも堕ちたものだ』
ブルマの言う通り、もうチャンスはないかも知れない。
だが…
『寝入ったところを襲うなどオレには出来ん』
自分に言い聞かせる様に呟き、部屋を後にした。
―彼はその後この日の絶好のチャンスを逃した事を後悔する事になる――かも知れない