ターゲットは君

□夢
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スクリーンの向こう側にいる男性にその中へ引っ張り込まれたなんて人類的に初であろう私ですが、この状態いつまで続くのでしょう。




スクリーンの男性(もう彼でいいや)にかれこれ10分ほど抱きしめられているのですが…この人誰なんですかね?





こんな顔の整った人とは知り合いでもないし、見たこともない…でも彼は私のことを知っているみたい。

因みに私がいる部屋、真っ白なんです。家具も壁も床も全部…ビックリですよね。スクリーン抜けたら真っ白い部屋って。眩しいったらないですよほんと。



…で、そろそろ離してもらってもいいよね?
初対面の人に10分も抱きしめられて、しかも私の肩に顔をうめている状態で平気な人はきっといないと思うよ。





『あのー…そろそろ離れてもらってもいいですか?』




彼の肩をトントンと軽く叩いて声をかけてみる。
抱きしめ返す形になるけどそんなの関係ない。
とりあえず今は状況把握が大事だと思うから。



声をかけると彼は「悪い」と頭をかきながら名残惜しそうにだけど離れてくれた。



「ちょっと嬉しくて歯止めが効かなかったみたいだ。」



歯止めってなに!?
やっぱり彼は私のことを知っているのだろうか。


こうなった今、いろいろと彼に聞かないとダメみたいだ。





『私、話に全然ついていけないんだけど、貴方は誰?
どうして私の事を知ってるの?』



尋ねる立場上、敬語のほうがいいかなとも思ったんだけど、彼も敬語使ってないし、やけにフレンドリーだからそこあたり気にしないで聞いてみた。



「急にごめんな?俺の名前は青海颯(おうみはやて)。なんで名前のことを知ってるかっていうと、
……その…夢………で…」


少し恥ずかしそうに、私から目線を外し、斜め上を見ながら頬を掻いている。



『夢?』



「信じてくれるかわかんねぇ、けど…俺、小さいときからよく夢を見てて、最初はなにも気にしてなかったんだ。気づいてもいなかった。けどふと、気付いたんだ…
一人の女の子がずっと出てるなって」


言いにくそうでいて、ちゃんと聞いて、信じてもらえるようにと真剣に話す姿に私も信じよう、信じてみたいという気にさせてくる。
でもなんだ?そのロマンチックすぎる話。



「…俺が歳を重ねる度その子も一緒に成長してて、笑ったり、泣いたり、怒ったり表情が豊で、なんか気になった。」



真剣にに聞いてみたものの、予想外な内容に付いていけないのですが……
いろいろツッコミたい部分があるが、話の続きも気になるので口を挟まないで聞いてみようと思います。



「8年くらい前かな…俺、気になってさ……会いたいって思ったんだ。お前に………
だからどうやったら会えるか、どうしたら一緒の空間にいれるのか研究することにしたんだ。
そして今日長い間研究していた実験も名前を連れて来ることで成功した。
……これが俺が名前を知っている理由。信じられねぇだろ?」


困ったように言う颯だったけど、嘘を言っているようには見えなかった。



『颯、が、嘘を言っているようには見えない。』



「名前…」





でもそんな小説や映画でしかありえないような話なんて、想像ができない。
だって颯は私の過去を知っているってことでしょ?プライバシーの侵害もあったもんじゃないじゃない。




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