光と色とそよ風と
□Lesson.5
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『えーっと、必要なものは…』
時刻はいつの間にやら17時になっており、お腹も空いてきたということで、私、名前は今日の食材を買いに近くのスーパーに来ております。
でも特にメニューというメニューは決まっておらず、ぶっちゃけ今日は作るのが面倒なんで、そうめんでいいかな、とかも思ったりしています。
とりあえず、帰るまでは手伝いをする宣言もしてしまったし、ほぼ常識知らずの彼らを投げ出すわけにもいかない。こちらとあちらの区別が彼らにはまだついていないようだけど、それはそれ、これはこれな感じで、悠里ちゃんの如くThroughしてしまおうかと思います。
あと、頑張って敬語で話してたら「おい、名前。その言葉ヅカイはやめろ。」と翼に言われてしまいました。きっと私の敬語ぎこちなかったんだろうな…
「苗字。トマトはこっちのほうがお得だぞ。」
『あ、ホントだ。』
そしてなぜかあの主夫であり人気バンド、ヴィスコンティのリーダー、七瀬瞬が一緒に買い物に付き合ってくれています。
最初は周りのB6…B5、いや瑞希がまだ寝てるからB4に言われたせいか「なぜ俺が行かなくてはならないんだ!!」と言ってたんだけど、私が謝ったら「お前が謝るようなことではない」と付き合ってくれました。
ただ、問題が一つ。
美形でいて赤い長髪というだけあって、奥様方だけでなくその奥様方と一緒に買い物に来ているちびっ子の視線が痛いです…はい。
「おい、次は何を買うんだ?」
『トマト入れたし、ドレッシングあるし……あ、そうめん!』
「そうめんか…安いうえに暑い日にはもってこいのメニューだな。」
『うんうん。私、夏に食べるそうめん好きなんだー』
ただ今日のそうめんはいつもと違う形で作ろうと思ってるんだ。ドレッシングとツナで和えて、トマトとレタスを散りばめたサラダ風そうめん。サッパリしててきっと美味しいと思うのだよ。
でも、たぶんこれだけでは食べ盛りの彼らには足りないだろうから、他にも何品か作るけどね。
◇◆◇◆◇
無事に買い物も終わり、二人で一つずつ買った袋をぶら下げて、オレンジ色に染められた道を歩いていた。
『七瀬くんが付き合ってくれたから凄く助かったよ。ありがとう。』
「いや、別にそれはいいんだが……それよりも!夕飯はそうめんと決まっているというのに、なぜ必要のないジュースやらお菓子やらアイスが入っているんだ?!どう考えても今日必要なものではないだろう!!」
調子に乗って買い過ぎてしまったかな?でも家に誰かがいるの久しぶりだし、これから大変だと思うけど、楽しくもあるんだ。
『ごめんごめん。七瀬くんがいたから余計に買っちゃった。』
「こんなにたくさん買って、無駄遣いとしかいいようがないな。そもそもお菓子なんか買わなくても3食きちんと食べてれ死にはしないn…」
やっぱり瞬は凄いんだな。
主夫というか節約家というか…とにかく凄い。
『七瀬くん!』
「なんだ………んぐ!」
『まぁこれでも食べて。』
これ以上うるさくならないように、今日のありがとうの気持ちもこめて、さっきこっそり買ったアイスを瞬の口に入れる。あ、このアイスはさっき瞬の言っていたものと違うからね!さっきのは箱のアイスだから!!
『これは私からの今日のお礼。場所が似ているとはいえ、急にこっちに来てしまっていつ帰れるかもわからないのに、買い物に付き合わせてしまって…いずれちゃんと帰れるとは思うけど、その時まで私、頑張ってサポートするからね!』
「……………」
『あれ?私なにか変なこと言ったかな??』
急に瞬が黙り込んでしまった。
「…お前、周りから変わっているとか言われないか?」
『言われたこと、ないけど。』
いきなり何なのだろうか。
そりゃあ友達からは天然とか言われたことはあるけど、変わっているなんて言われたことは…ない、よ。たぶん。
「俺からしてみたら、苗字は変わっているな。いくら俺達のことを何らかのゲームを通して知っているとはいえ、俺達からしてみればお前は他人だ。なのに、帰れるときが来るまでサポートするなんて言ってみたり、他の奴らを家に置いて夕飯の食材買い出しに行ったり…変わっているだろう。」
『七瀬くんは優しいね。』
「は?」
『だってそんな他人の私の言葉を少なからず信じてくれているみたいだし、買い出しにもなんだかんだで付き合ってくれてる。それに、変わっているという言葉はいただけないけど、私のことを心配してくれてる。うん。やっぱり七瀬くんは優しいね。』
悠里ちゃんと出会う前だから、ピリピリした態度でいろいろと言われると思っていたけど、思ってた以上に、七瀬くんは優しい人だった。
それは、私が彼らの過去を知っていることを言っていないからなのか、歳が近いからなのかわからないけど、みんなが無事に帰れるまで、このままの瞬でいてもらえたらなって、思った。
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