光と色とそよ風と
□Lesson.8
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……クケーって…………も、もしかして…
声のしたほうへ顔を向けると、いるではありませんか。VitaminXのマスコット的キャラクター。
『トゲー?』
「クケ、クケケ」
そうだと頷いているのか首を縦に動かしている。
うっわ、可愛い…
可愛いぞ。
『ま、斑目くん。ト、トゲー触ってもいい?』
「……優しく…ね…」
トゲーの御主人様に聞いてみればたぶん了承の言葉が返ってきた
『ありがとう!』
手を恐る恐る差し出すと、トゲーの方からテテテと私の手へ来てくれた。
周りで何か言っていたような気がするが、今はそれどころではない。
トゲーが可愛すぎて萌え死にしそうなんだ。
『へへへ、可愛いなー』
「だよなぁ。トゲー可愛いよなぁ。気持ちわかるぜ。でも、珍しいな。トゲーが初対面の人に懐くなんて…」
トゲーは私の掌で、首を傾げたり、クケクケと鳴いたり、時には斑目くんを見たりと私の胸をわしづかみにする。
「名前ちゃーん。お腹すいたー」
『うぐ』
ズシリと背中に重みが…というか私、今何されてる?
え?後ろから抱きしめられてるの??ウソ…マジで???
ちょ吐息が耳に……
「そうだな。苗字、俺もhungryだ。何か作れ。」
「変なモン、作んじゃねェぞ」
「ご…風門寺くん……重い。重いよ。暑いよ。は、離れてくれないかな〜。じゃないとご飯作れない。お腹すいたんでしょ?」
「ブー。お腹はすいたけど、離れたくないー…………あ、んじゃあ、名前ちゃんがゴロちゃんのこと名前で呼んでくれたら離れてア・ゲ・ル。」
「そうだな。苗字。俺の事も名前で呼ばせてやろう。」
あれ?私頑張って苗字で呼ぶ努力をしてたのに…はぁ
『わかった。名前で呼ぶよ。悟郎くんに翼くんね?だから、離れて!』
「OK。いいだろう。お返しに俺も名前で呼んでやろう。名前、光栄に思え。」
「なんかサラっと呼んじゃってくれたけど…まぁいいや。名前ちゃんに名前で呼んでもらったーやったぁ」
やっと離れてくれた。よし、ご飯作りに行くか。
『ぶ』
部屋から出ようと方向転換したら何かにぶつかってしまった。
そしてそのぶつかったものに押し付けられている。
え?え?目の前が真っ暗だよ?
しかももがいているのに体が動かない。
「あー!!ミズキずるーい!!!ゴロちゃん仕方なく名前ちゃんから離れたのにぃ」
え?ミズキって言った?
あの、基本的に人が苦手な瑞希??
私はあの瑞希に正面から抱きしめられているらしい。掌に乗っていたトゲーはいつの間にか瑞希の肩に移動していた。
「ままままま斑目!!お前苗字に何をしているっ!ふふふしだらだぞ。」
「…ずるい………ぼくも…名前……」
『プハー…え…み、斑目くんも?』
頑張って斑目くんの腕をもがき、なんとか顔を斑目くんの方へ向かせることが出来た。だが、背が高いから、どうしても見上げる形になってしまう。
「呼んでくれなきゃ…やだ…放さない」
なんだこの可愛くて大きい生き物は…大きなわんこみたい。
『わかった。わかったよ。わかったから離れよう?』
「……………」
『ね?瑞希くん??』
「離れなきゃ…ダメ?」
『いやいやいや。離れてほしいから名前で呼んだんでしょうが。』
「キシシ。なんか面白いことになってんなァ。よぉし、名前、俺様のことも名前で呼ばせてやんよ」
「俺もいいぜ。ただ、俺はお前の名前覚えられるかわかんねぇけど…努力はしてみる。つーかこうなったらみんなのこと名前で呼べばいいじゃねーか。」
さきほどまで静かだった七瀬くんは暴走し、草薙くん、仙道くんもが名前で呼べという。
ウソだろ、おい。
まぁ、こちらとしてはありがたいんだけど…こんな、一日で進展あるものなの?
『わかった。わかったから、早く台所に行かせてぇぇ』
「皆様、それくらいにしないと苗字様に嫌われてしまいますよ」
『永田さん…!』
永田さんいい人!本当にいい人!!
「私も」
え?
『私も、名前様とお呼びさせていただきます。ですから、名前様も私のことも、『智也さん』とお呼びください。」
永田さんまで!?
智也さんて…呼んでみたいけど絶対に無理だ。
『むむむ無理です。永田さんまで…もしかして、私のことからかってます?』
「申し訳ございません。あまりにも名前様が可愛いらしかったもので」
『/////』
なんで名前で呼ぶ呼ばないでこんなに疲れなければならないんだろう。
早く台所行きたい。ここから逃げ出したい。
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