■寵猫抄 5

□鬼はどこ…?
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この冬は暖冬らしいとあちこちで囁かれていたものの、
さすがに大寒も過ぎれば、本格的な寒さとやらが顔を出し始める。
北国では大雪も降るし、今の今まで秋物で十分なんて言ってた気候が一転し、
ちょっと遠出するのにうっかり到着地の天気を確認し忘れて、
タイヤの交換忘れてたと、難儀な目に遭う人も続出…というこの頃。

「にゃ?」
「みゃう。」

広々としたリビングには
この時期恒例、分厚いラグの上に据えられたコタツが
主役然として堂々と裳裾を広げて鎮座しておいでで。
その周縁をもっと我が物顔で駆け回ったり転寝したり、
小さな仔猫らがちょこまかと遊んでいるのも恒例の図で。
自慢の毛並みを陽で暖められてのこと、
片やはぽわぽわ膨らませ、もう片やはつやつやに光らせておいでで。
喧嘩ではなかろうが
時々はちょっかい出し合いの末に 絡まるようになっては
ゴロゴロとこたつ布団の斜面を転がり落ちてたりするものだから、

 「ああほら、打ちどころが悪けりゃ痛いでしょうに。」

ぼそっとか、どさっとかいう音が立つたび、
あれあれまあまあと どこからでも駆けつけて、
どっちも怒らないのとぎゅむぎゅむ抱っこして取り成してくれる。
そろそろ確定申告の準備しなくちゃと、
相変わらず忙しい金髪美形の敏腕秘書殿。
それでも家人は大事とばかり、
陽だまりでようよう温もった
メインクーンちゃんと黒ネコちゃんの毛並みへ交互に頬を埋めては、

「ああ、なんて極楽かvv」

猫吸いっていうんですよ、ほら、勘兵衛さまもなんて、
せっかくの冴えた美貌を緩ませてしまう辺り、
相変わらずの熱烈な溺愛ぶりはお盛んなままらしい。
急な寒さはだが、まったく堪えぬらしく、
そういや暑いのが苦手な分、寒いのはずんと平気で動き回る奴だったなぁと、
いつぞやも友人の温泉宿に行った折、
現地の人より張り切って雪かきしていた様子を思い出しつつ。
それでも、

 「このごろは性悪なインフルエンザが暴れておるというぞ。」

過信はいかんと家長様が一応の釘を刺す。
もさりとした蓬髪を背中まで伸ばした、一見怪しい風体の壮年殿。
最近は話題の映画やゲームの原作者として、取材にだけでも顔出しするようになったので、
若いクリエーターじゃああるまいしなどと ひそひそされることはなくなっているものの、
今度は渋いし落ち着きがあって素敵だと、
新作発表の場に行くと注目され倒すようになったのが、七郎次殿の目下の悩みなのだとか。

 《 目移りされるような心配は要らないだろうに。》
 《 そういう蓮っ葉なことじゃあなくってだな。》

他所の猫だが事情通な、同じく黒猫のヒョウゴ殿が遠出してきたのへと
日向ぼっこがてらの近況報告と相成って。
クロが小さく苦笑をし、

 《 若いお嬢さんたちが取り巻くと、
   相応の年齢のご婦人が寄って来にくくはないかと。》
 《 …おやまあ。》

何でそういう斜め上の案じ方をするものか。
相変わらずにお人よしというか、方向音痴なお人よのと、
傍らでは 昨夜の更夜の大暴れ、
節分の大祓いを前に、勇み脚で徘徊していた邪妖を束にしてぶった斬った疲れから転寝している
キャラメル色の毛玉こと、大妖斬りの太刀使いさんの爆睡を、
苦笑半分見守るお仲間で。

  おや、ヒョウゴちゃんじゃないか。
  久し振りだね、雪乃さんはお元気?

洗濯物を畳もうと抱えて来た話題のお人の登場に、
にあんと鳴いて愛想を振った、
美形猫さんたち
平和な日向ぼっこの図だったそうな。



   〜Fine〜  19.01.28.





 *久し振りにもほどがある、大妖狩りの猫さんたちです。
  もはや島田家のセコムと化しておりますが、
  時々他所の坊やからの電話もあって、
  相変わらずにほのぼのしてもいる様子ですvv




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